日立製作所 フェロー 矢野和男さん(58)/AI研究の第一人者。2007年にErice Prize、12年にSocial Informatics国際会議最優秀論文など多数受賞。工学博士。米電気電子学会(IEEE)フェロー(撮影/写真部・加藤夏子)
日立製作所 フェロー 矢野和男さん(58)/AI研究の第一人者。2007年にErice Prize、12年にSocial Informatics国際会議最優秀論文など多数受賞。工学博士。米電気電子学会(IEEE)フェロー(撮影/写真部・加藤夏子)
日立が開発した、名札形の「ウェアラブルセンサー」。行動しているか静止しているかといった身体情報、滞在場所の情報などを計測(撮影/写真部・加藤夏子)
日立が開発した、名札形の「ウェアラブルセンサー」。行動しているか静止しているかといった身体情報、滞在場所の情報などを計測(撮影/写真部・加藤夏子)

 まさに今、チーム対抗で職場の活性度を競い合う「ハピネスプラネット/働き方フェス」(本戦は9月3日から3週間)がオンライン上で開催中だ。日立製作所が国内企業のあらゆる業種から公募した1500人以上、168チームが参戦している。

【写真】日立が開発した、名札形の「ウェアラブルセンサー」

 競技の“ものさし”になる指標は、スマホのアプリで計測する組織の「ハピネス度(幸福感の度合い)」。そんなもの、測れるの? と問うと、システムを開発した同社フェロー兼未来投資本部ハピネスプロジェクトリーダーの矢野和男さんは、答えた。

「測れるんです」

 同社の研究開発グループが、個人に合わせた働き方改革を支援するサービスの試作版として開発。2015年にハピネス度計測で組織活性度を割り出す「ウェアラブルセンサー」(写真上)を事業化。数十社で使われている。今回リリースのアプリは、ゲーム感覚で職場の活性度を競い合う仕様になっている。

 研究は、物体の速度の変化率を測る「加速度センサー」で人の身体運動のデータを収集するところから始まった。得られたデータをアンケートと掛け合わせ、人が充実感を感じている時、逆に職場のムードが悪くなった時などと個別に分析したところ、明らかに組織の活性度と相関する「無意識の体の動きのパターン」を発見。このパターン計測から割り出した指標を、「ハピネス度」と名づけた。

 画期的なのは、継続的なハピネス度計測から、「幸福な組織ほど生産性も高くなる」法則を見つけたことだという。定量的かつ客観的に得られるデータから実証されたことが「ブレークスルー」(矢野さん)に。ハピネス度計測とAI(人工知能)の掛け合わせで職場の働き方を診断しながら生産性を向上させるサービスとして事業化した。

 フェスで使用するのは各自が普段使っているスマホ(iPhoneのみ)。スマホにも搭載されている加速度センサーを使うため、勤務中の一定時間はスマホを計測器がわりに「身につける」。1日数回アプリのアンケートに選択式で答える。個々の積算値からチームのハピネス度が算出され、週ごとにランキングがアプリ上で発表される。

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