唯一の被爆国であるにもかかわらず、条約不参加の方針を変えない日本政府には、「核兵器禁止条約の発効に向けた流れの中」で、核兵器のない世界の実現に向けて、国際社会が対話と協調を進めることを促す役割を求めた。ただ、条約に署名・批准するように直接的な言葉で政府に訴えることは避けた。一方、9日の長崎の平和宣言には、日本政府に条約参加を直接求める文言が盛り込まれる見通しだ。

 これに対し、安倍晋三首相はあいさつで、「近年、核軍縮の進め方について各国の考え方の違いが顕在化している」とし、「核兵器国と非核兵器国双方の協力を得ることが必要」と強調。「粘り強く双方の橋渡しに努め、国際社会の取り組みを主導していく」と決意を述べた。ただ、昨年に続き、核兵器禁止条約への言及は避けた。

 式典には、初参列となったトルコやミャンマーを含む85カ国と欧州連合(EU)の代表者が参列したとみられる。核保有国では中国が欠席したが、米英仏ロは出席。インドやパキスタン、イスラエルの代表者も来たという。広島市は事前に157カ国とEUに参加を促した。

 平成最後の原爆の日となった6日は終日、広島県内各地で核廃絶を訴えるさまざまな催しがある。平均年齢が82歳を超えた被爆者は、多くが健康問題を抱えている。被爆73年という長い年月を経て、世界に訴えてきたことは届いているのか。

「核兵器はいまだ存在する。このままでは先に原爆で亡くなっていった家族や友人に顔向けができない」

 多くが口癖のようにそう語る被爆者たちの思いは複雑だ。(AERA編集部・山本大輔)

AERAオンライン限定記事