これにてイーブン。最終決戦のベルギー戦に突入した。

 深夜3時からの放映ということで、「感動JAPAN」にはやや不利なピッチ条件でのスタート。ほとんどの人は朝のニュースや、SNSで結果を知ることとなった。結果はなんと「3対2」、しかもアディショナルタイムで逆転負けを喫するというドラマチック過ぎる展開。きちんと生観戦しなかった人にまで「日本サッカーに可能性が見えた」と言わせた。テレビなどでは番組がスタートするや拍手から始まるという異様なムード。もうこうなるとあとは「感動をありがとう!」と言うだけだ。「感動JAPAN」の全員サッカーの餌食に。

 悲しいかな「非感動JAPAN」は……「とはいえ、西野朗監督は日本サッカーのリテラシーを上げた」とか、これ以上失点しないよう時間稼ぎの“総括”を始めるしか手だてがなくなった。しまいには、あの小柳ルミ子にも「冷静だったのはルミ子だけ」と敵ながら拍手を送りだす始末。

 かくして、「感動JAPAN」の大勝利でW杯の幕は閉じることとなった。

 ちなみに、私が感動したのは“うっかり”である。

AERA 2018年7月23日号

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マキタスポーツ

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マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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