21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会(以下、21・老福連)が全国の特養、養護などの施設長1906人を対象に行ったアンケートによれば、定員に充足していない養護は全体の約7割に上った。

「養護の運営で余剰金は出ず、補助金なしに施設の改善や特養への機能転換を図るのは困難だ。施設の老朽化が進めば、自然消滅するしかない」(同前)

 生活保護を受ける高齢者世帯は05年10月から過去最高を更新し続け、孤独死など高齢者の貧困も問題になっている。養護の需要も高まっているかに思えるが、定員割れを起こす原因は何なのか。

 全国老人福祉施設協議会(以下、老施協)は3月、自治体による「措置控え」に関する実態調査などを国に求める意見書を厚生労働大臣に提出した。老施協養護老人ホーム部会長の大山知子さんは、こう話す。

「実際に措置すべき対象者がいても、養護に入れない措置控えが起こっています」

 理由は二つあるという。一つは、小泉政権時の三位一体改革により保護費が05年に一般財源化されたことだ。自治体は措置すればするほど自身の財政を苦しめることになった。生活保護なら4分の3は国から出され、自治体の負担が少ない生活保護に流されやすい面があるという。

 二つ目は、自治体職員の理解の低さだ。短い期間で人事異動もあり、担当部署でも養護のことを詳しく知る人は少ない。

「都道府県別に措置率を見ると100%近いところもあれば、50%に満たない県もある。入所判定委員会も半年に1回というところもあれば、毎月開くところもある。自治体窓口の対応で措置率は大きく変わり、定員割れどころか待機者のいる養護もある。需要がないわけではなく、支援が必要な人を掘り起こせていないだけです」(大山さん)

(編集部・澤田晃宏)

AERA 6月4日号