トランプ政権の偏向政策が国際社会を混乱させている(※写真はイメージ)
トランプ政権の偏向政策が国際社会を混乱させている(※写真はイメージ)
生後8カ月の乳児の葬儀で涙を流すパレスチナ人の母親(右)。乳児は、イスラエル軍の放った催涙弾のガスを吸って死亡したという(写真:ロイター/アフロ)
生後8カ月の乳児の葬儀で涙を流すパレスチナ人の母親(右)。乳児は、イスラエル軍の放った催涙弾のガスを吸って死亡したという(写真:ロイター/アフロ)

 5月14日、イスラエルで米国大使館のエルサレム移転を記念する式典が数時間後に迫っていた。この時、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラエル境界には、移転に抗議するパレスチナの人たち数万人が集結していた。「式典が始まったら境界を越える」。石を持ち、集めたタイヤに火をつけたパレスチナの人たちと向かい合うイスラエル軍は、威嚇射撃を始めていた。

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 現場の様子を数時間にわたり中継した衛星テレビ局アルジャジーラの映像はすさまじかった。ヘルメットに防弾服の取材陣の目の前で、イスラエル軍から催涙弾が撃ち込まれる。それまでタイヤの黒煙に包まれていた境界のあちこちで、おびただしい数の催涙弾が白煙を上げていく。催涙弾は、イスラエル軍の装甲車から連射され、上空のドローンから落とされた。それでも境界に近づこうとする抗議デモに、完全武装したイスラエル兵が実弾を発射する銃声が響く。私服で丸腰の人たちに対する明らかな過剰防衛だった。

 パレスチナ自治区ガザ保健省によると、この日、ガザ地区では、イスラエル軍の銃撃などで58人が死亡、2700人以上が負傷した。犠牲者の中には、少なくとも子ども6人が含まれているという。イスラエル側の死者はゼロだ。ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエル軍が武力衝突した2014年以来、1日の死者数としては最悪の事態となった。

 この時、エルサレムで開かれていた記念式典には、トランプ大統領の長女イバンカ補佐官と娘婿クシュナー上級顧問が夫婦で仲良く出席し、ネタニヤフ首相らイスラエル政府関係者らから拍手、喝采を受けていた。

「イスラエルとパレスチナの和平に努力するためのトランプ大統領のチームの一員として、この場に立てたことを誇りに思う」。そう演説したクシュナー氏はこうも話した。

「先月の、そして今日も起きている抗議行動に見られるように、挑発的な暴力は問題であっても解決策ではない」

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