スポーツ医学の起源は、古代ギリシャ・ローマ時代にさかのぼるが、産婦人科医で近畿大学東洋医学研究所長を務める武田卓(たかし)医師によれば、女性アスリートに絞った研究は近年始まったばかりだという。

 武田医師が着目したのは、女性アスリートの月経前症候群(PMS)とパフォーマンスの関係だ。PMSは月経の1、2週間前から始まる不快な症状の総称で、むくみやだるさ、イライラ、不安、過食や拒食など、現れ方や程度は人それぞれだ。

 14年、近大体育会所属の女性アスリート174人について調べたところ、44.3%がPMSは練習や試合の障害だと感じていた。17年には同研究所と大塚製薬の共同研究で、エクオールと呼ばれる活性型イソフラボンを体内で作れない人は、作れる人に比べてPMSによるパフォーマンス障害リスクが3.3倍も高いことがわかった。

 エクオールは大豆イソフラボンを摂取した時に体内で作られるが、特定の腸内細菌の有無で作れる人と作れない人がいる。武田医師は、エクオールをサプリメントなどで補給することで、女性アスリートのパフォーマンスを改善できると期待する。

「こうしたメカニズムが明らかになれば、ビジネスの現場で働く女性のパフォーマンス向上にも役立つのではないでしょうか」(武田医師)

(編集部・石臥薫子)

※AERA 2018年3月26日号