姜尚中「いずれに転がっても米朝会談は十分にある」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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姜尚中「いずれに転がっても米朝会談は十分にある」

連載「eyes 姜尚中」

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AERA#姜尚中

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

いずれに転がっても米朝会談は十分にある(※写真はイメージ)

いずれに転がっても米朝会談は十分にある(※写真はイメージ)

 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

*  *  *
 平昌(ピョンチャン)オリンピックの開会式翌日に、米朝首脳会談に近いものが予定されていたことが米国側の報道でわかりました。北朝鮮側のドタキャンによって幻に終わったわけですが、私が一番驚いたのは、この会談が韓国の大統領府でセッティングされていたということです。これまで北朝鮮は米国との単独交渉以外は一切受け付けないと言い続けてきました。今回、韓国側が列席しないまでも韓国の大統領官邸のなかで米朝会談を行うということは、何を話しているのかということが筒抜けです。盗聴しようと思えばいくらでもできるわけですから、韓国を間に挟んだ3者協議の可能性も排除できないのです。

 米韓に楔を打ち込むために北朝鮮は「ほほえみ外交」をやっている、という見方が大半でしたが、実際に北朝鮮側は韓国をステップにして米国との接触を考えていたのでしょう。幻に終わった米朝会談ですが、「あったかもしれない」ということだけでも、去年までとは違う大きな変化です。平昌オリンピック閉会式に合わせて韓国入りした北朝鮮の金英哲(キムヨンチョル)朝鮮労働党副委員長は、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領との会談で「米朝対話を行う用意がある」との考えを明らかにしました。一方でこの対談の翌日、米国のシュライバー国防次官補は小野寺五典防衛相との会談で、「(平昌)パラリンピックの後には米韓軍事演習を再開させる」と強調しています。

 4月15日は北朝鮮最大のセレモニーである金日成(キムイルソン)の誕生日を祝う「太陽節」です。北朝鮮としては、米韓合同軍事演習は避けたいでしょう。仮に米韓軍事演習が縮小や延期になった場合、北朝鮮は挑発行為などをモラトリアムにする可能性もあります。一方で、軍事演習が予定通り行われ、太陽節に至るまで続くような場合、何らかの挑発行為に出る可能性もあります。いずれに転がっても米朝会談は十分にあると思います。ただ、どんな形であれ米朝会談の実現の可能性は、米韓の間の緊密なすり合わせにかかっていると思います。かつての小泉政権が果たせたかもしれない米朝間の橋渡しの役割を、今回は文政権が果たそうとしています。こういう事態の中で安倍政権がどういう対応をしていくのかが問われています。

AERA 2018年3月12日号


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