ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
仮想通貨をめぐる騒動が増えてきた(※写真はイメージ)
仮想通貨をめぐる騒動が増えてきた(※写真はイメージ)

 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 日本ではコインチェック騒動が起き、アメリカでは過去最大規模の仮想通貨を使った資金調達(ICO)が証券取引委員会(SEC)により差し止められる事態になり、仮想通貨をめぐる騒動が案の定増えてきました。

 ぐっちーとしては、技術はともかくとして、仮想通貨は現時点では明らかに詐欺と申し上げております。これに投資をするということは、儲かればいいやという、いわば「ねずみ講」で「儲かった、儲かった」と、はしゃいでいる人と同じことをやるわけで、ある意味、その人の人生観、倫理観の問題だと思っています。儲かるか否か、ではなく、人間としてやるかやらないか、の問題ですね。

 こういうとき、年初から何度も言ってきた「本源的価値」を考えねばなりません。皆さんが今一度考えねばならないのは通貨とは何なのか、という点ですね。単なる紙切れなのに、なぜ物が買えたりするんだろうか、という話です。それは皆さんが信じているから、という理由しかなく、それこそが壮大な「虚構」の上に成り立っていると言ってもいい。哲学者のサルトルやフーコーを出すまでもなく、人類にはそういう虚構がいくつもあるわけで、最大の虚構が通貨と言ってもいいでしょう。

 今の時点で、通貨の価値を決定しているものは何だと思われますか? 日本円はなぜ110円が1ドルと交換されているのか。昔は360円だったわけで、円高で大変だ大変だと新聞記者は騒ぎますが、1ドルが昔の3分の1以下でもらえてしまうわけですからこんなにめでたい話はない。もし1ドルが1円とかになってくれれば、100万円が100万ドルというわけですから、誰でもニューヨークに家が買えますわね。なのになぜ円高、つまり通貨の価値が上がると、国が破綻するなどと新聞は書くのか、皆目見当がつかなくないですか?

 要するに通貨価値とはイコール国家権力というしかないわけです。経済はもちろん、政治、軍事、国家のあらゆる力が通貨というものに「昇華」されていると考えるしかない。当然その国家が不安定になればその通貨の価値も落ちてきます。それが通貨安。これで破綻した国はいくらでもあるわけですよ。ここまで読んでいただいて、まだ仮想通貨に価値があると思われる方は相当「やばい」と思いますが……。

AERA 2018年2月12日号

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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