73年、三共(現・第一三共)の研究者だった遠藤は、6千種類以上の菌類を調べあげた結果、京都の米店で見つかった青カビからコンパクチンと呼ばれる物質を発見した。これがのちにコレステロール低下薬の中でもスタチンと総称される「HMG-CoA還元酵素阻害薬」の第1号となる。現在までに天然由来・合成化合物合わせて全世界で7種類(日本では6種類)のスタチンが発売。世界で数千万もの人々が服用中という。
世界の死因トップは心筋梗塞などの虚血性心疾患だが、スタチンは血液中の脂質であるコレステロールを低下させ、死亡率の低下に大きく貢献。そのインパクトの大きさから「動脈硬化のペニシリン」とも評される。
狩人はまだいる。藤沢薬品工業(現・アステラス製薬)の研究者だった木野亨だ。
同社の研究所があった茨城県つくば市の筑波山の土の放線菌の産生物に目をつけ、強力な免疫抑制物質タクロリムスを見つけた。すでにノルウェーの土壌の放線菌から、サンド(現・ノバルティス)が免疫抑制薬シクロスポリンを作っていたが、藤沢薬品はこのタクロリムスでさらに薬効の優れた免疫抑制薬プログラフを93年に発売。臓器移植医療を前進させた。後にアトピー性皮膚炎治療の外用薬として発売したプロトピックもこの成分だ。