図版=AERA 2017年12月11日号より
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 北朝鮮が核実験や弾道ミサイルで挑発を続けるなか、 9月3日の核実験を契機に「電磁パルス攻撃」にも言及し始めた。

 ヒトも建物も壊さず、見た目には何の変化ももたらさない。電子機器のない時代であれば、兵器としては無用の長物だったはずの電磁パルス(Electromagnetic Pulse:EMP)が、「貧者の兵器」として注目されている。

 核実験を繰り返す北朝鮮が、9月3日の水爆実験について「巨大な殺傷・破壊力を発揮するだけでなく、戦略的目的に応じて高空で爆発させ、超強力EMP攻撃まで加えることのできる多機能化された熱核弾頭だ」と言及したことで、にわかに脅威が高まった。

 EMPとは、核爆発によって放出されるガンマ線が強力な磁場を発生し、その磁場によって地上に生成する大電力の電波のこと。30~400キロという高高度で核爆発を起こすと、地上での拡散など攻撃力が最も甚大になる。イメージとして宇宙から押し寄せる目に見えない津波のようなものだ。朝鮮中央通信による北朝鮮の「公式発表」を受けた韓国公共放送KBSは「自動車などの交通手段や金融機関、病院、通信施設など、すべての基幹施設が停止したり、誤作動を起こしたりして、事実上石器時代に戻る」と専門家の声を紹介した。

 しかし、日本には2年以上前からこの攻撃の危険性を指摘していたアナリストがいた。元陸上自衛隊化学学校長の鬼塚隆志氏(68)である。防衛大学校で電気工学を専攻、フィンランド防衛駐在官なども務め、2005年に陸将補で退役後は、日本戦略研究フォーラムなどに所属し、政策提言などを行っている。

「EMPという言葉自体は昔から聞いていましたが、私が現役時代はピンと来なかった。ところが退役後にインターネットで各国の軍事関連の論文をあたっているうちに、研究が進んでいる割に周知が図られていないことに気がついて、これは国家レベルの喫緊の課題であると警鐘を鳴らしているのです」

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