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米朝危機のチキンレース 日本の「万全の態勢」は気休めか

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田岡俊次AERA#北朝鮮

山形県内初のミサイル想定訓練が酒田市であった。防火水槽の陰や軒下に身を隠す住民たち (c)朝日新聞社

山形県内初のミサイル想定訓練が酒田市であった。防火水槽の陰や軒下に身を隠す住民たち (c)朝日新聞社

 挑発が繰り返される米朝危機だが、このチキンゲームは冷静に見たほうがいい。日本政府が喧伝する「万全の態勢」もちょっとおかしい。

 8月21日から31日にかけ行われている米韓合同演習「乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアン」に対抗して、北朝鮮がグアム島に弾道ミサイルを発射し、米国が北朝鮮に報復攻撃を加えて戦争になるような話が日本のメディアに多い。だがその公算は低い。

 第一にこの演習は3月、4月に行われた「フォール・イーグル」のように31万人の大兵力や、多数の艦艇、航空機を動員した「実兵演習」ではない。もっぱらコンピューター上の指揮、通信演習にすぎない。

●グアム領海外を狙う

 実兵演習だと、それを装って兵力を集中し、突然攻撃することもありうるから、北朝鮮が脅威を感じるのも当然だが、コンピューターゲームのような演習に対抗して米国領のグアムに向け弾道ミサイルを発射、開戦するのはあまりにも非合理だ。

 第二に、北朝鮮が発表したグアム島へのミサイル「包囲射撃」はグアム島自体は狙わず、30ないし40キロ沖、島から12海里(22キロ)の領海外に4発を落下させる、としている。米軍基地を狙わず、海に落とすなら日本海への発射と同様、弾頭をつけず、威嚇をはかる気だろう。

 米国要人たちは「米国が攻撃されれば反撃する」との方針を示しているが、弾頭がないミサイルが領域外に落下したのに対し、米国が北朝鮮を攻撃すれば、空砲に対して実弾で応戦するような形になる。米軍は2013年からグアムにミサイル防衛用の「THAAD(サード)」ミサイル(射程200キロ、最大射高150キロ)1個大隊(8連装発射機が定数で6基)を配備しており、これによる迎撃は行うだろう。

 第三に、米国の軍首脳部は北朝鮮との戦争に極めて慎重だ。1994年に米国は北朝鮮の原子炉などへの航空攻撃を検討したが、在韓米軍は「それを行えば朝鮮戦争の再開となる。最初の90日で米軍に5万2千人、韓国軍に49万人の死傷者が出て、民間人を含むと死者は100万人」との損害見積もりを提出、米国は攻撃をあきらめた。


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