2030年。あなたの子どもは何歳だろうか。ちょうどこの頃、社会の中核を担うのは今の中高生だ。AI(人工知能)の進化で仕事も働き方も急速に変わり始めた。変化の加速度を考えると、学校選びの基準もこれまでと大きく違ってくる。もう「教育改革」など待っていては、わが子の成長に間に合わない。AERA 2017年6月5日号では、「AI時代に強い中高一貫・高校選び」を大特集。アエラが注目する中高一貫校・高校の中から、島根県立隠岐島前高校を紹介する。
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「コラボレーション力」と「グローバル」での注目株は、山陰地方の離島・中ノ島の海士町にある島根県立隠岐島前高校だ。
「すげえ! 遠くの海が目の前に見える」
岸壁でビデオカメラをのぞいていた同校2年の中村勇二さんが、思わず歓声をあげた。
「そうだろう、プロが使うカメラだもの」
地元ケーブルテレビ「あまコミュニティチャンネル」のディレクター、山口幸二さんがうなずく。中村さんを含む2年生の男女4人が取り組むのは、島の課題を見つけ、解決に向けて行動を起こす「探究活動」だ。チームは名付けて「2000(ミレニアム)Babys」。メンバーの一人、車塚美吹さんは言う。
「講演会で、島の漁師さんから後継者が減っているという話を聞いたんです。それなら実際に働いている人にインタビューしたビデオを作り、島の職業をPRしようと考えました」
実は、この車塚さんは宮城県の出身。同じチームの藤田一休さんも広島から来た。同校の生徒184人のうち、87人はこの2人のような県外からの「島留学生」だ。寮で暮らす留学生を地域住民も「島親」として受け入れ、休日には一緒にご飯を食べたり釣りをしたりする交流が始まった。
●少子高齢化で廃校寸前
島前地域は1950年のピーク時に1万6千人超いた島民が、2004年には6500人にまで減少。超少子高齢化に苦しんでいた。同校も08年には生徒が89人にまで減り、廃校寸前に追い込まれた。そんな中、海士町の山内道雄町長らが起死回生策として打ち出したのが、島外から教育や人材育成に通じている意欲ある人々を受け入れ、彼らが島の人と一緒に課題を解決することで高校を立て直そうという前代未聞のアイデアだ。熱意に打たれ、東京で大手企業の人材育成や教育サービスなど第一線で活躍した社会人も島に移住し協力した。