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東浩紀「仏大統領選で問われた グローバリズムの賛否」

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by 東浩紀 (更新 )

日本にいま必要なのは真のブルジョア政党かもしれない(※写真はイメージ)

日本にいま必要なのは真のブルジョア政党かもしれない(※写真はイメージ)

 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。
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 仏大統領選でマクロンが選ばれた。反EUを掲げるルペンは負け、昨年の英国民投票、米大統領選と続いた反グローバリズムの奔流はいったん押しとどめられた。安堵の息を漏らした読者も少なくないだろう。

 とはいえ、マクロンの前途はけっして明るくない。彼は議会に基盤をもたない。支持の多くは消去法だと言われる。なによりもルペンは、敗れたとはいえ34%近い票を獲得している。国内の分断を乗り越えるのは容易ではあるまい。

 ところでこの選挙であらためて明らかになったのは、現代世界の主要な政治的対立軸は、もはや右と左では「ない」ということである。実際今回の選挙では、長いあいだ仏政治を支配してきた共和党と社会党がともに存在感を失った。そして残った2人の立場は簡単に左右には分類できない。ルペンは右と言われるが、弱者にやさしい(ように見える)。マクロンは左派に近いと言われるが、実態は金融エリートだ。決選投票では、左右のイデオロギーではなく、グローバリズムへの賛否こそが問われたのである。

 この構図は米大統領選と酷似している。トランプは右だが弱者の支持を集めたし、クリントンはリベラルだが金融街と結びついていた。さらに付け加えると、ともに選挙戦後半で、サンダースとメランションという急進左派が支持を集めた点も共通している。ナショナリズムとグローバリズムが主要な対立軸を構成し、そこに古い左派の理想が名目的な第三勢力として関わるというこの構図は、おそらくは今後、先進国共通のものになっていくのではないか。

 さて、そんな状況認識をもって我が国を見てみると、日本の問題はじつは、右傾化や保守化にではなく、まさに上記の構図自体を作れていないことにあることがわかる。安倍政権は経済的にはグローバリズム寄りだが、イデオロギーは守旧的で排外主義的である。他方で野党はみなグローバリズム批判であり、マクロンに相当する勢力は存在しない。本来はそここそが民進党に期待される位置だったはずだが、同党はむしろメランションに向かっている。日本にいま必要なのは真のブルジョア政党かもしれない。

AERA 2017年5月22日号

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