「またPTAをやらなきゃ」という憂鬱(ゆううつ)に苛まれる人々の胸中とは? (※写真はイメージ)
「またPTAをやらなきゃ」という憂鬱(ゆううつ)に苛まれる人々の胸中とは? (※写真はイメージ)

「PTA役員決め」の季節だ。欠席裁判を避けるため、万難を排して保護者会に参加。できる範囲の仕事を引き受けてきたけれど、今年はちょっと風向きが違う。

 長野県に住む女性(46)は、子どもの小学校で配られたPTA役員選出のアンケートに大きくバツ印を付けて、こう書いた。

「次年度より非会員となります」

 夫婦で何度も話し合った結果だった。上の子が小学校に入ったころから、活動の理不尽さに悩んだ。第2子の妊娠がわかったとき、最初に頭をよぎったのも「またPTAをやらなきゃ」という憂鬱(ゆううつ)だった。

 アンケートには「できない」という選択肢はない。仕事でかかわる障害や病気を抱える人たちには、やりたくてもできないことがたくさんあるのに。

●脅迫じみた強制がイヤ

〈本部役員と各委員長などを引き受けられない事情がある方は、辞退理由を書いてください。なお、必ず辞退が認められるものではありません〉

 なんて書かれると、「脅迫」にしか思えなかった。

 前年度の理事たちが、それぞれの辞退理由を見比べて、認めるかどうか判断するのだという。プライバシーの侵害じゃないかと訴えても、やり方は変わらない。そんなときに目にした、PTAを退会する保護者のニュース。そんな選択肢があったのか、と背中を押されたという。

「人には得意・不得意があって、抱える事情も違います。例えば、病気を抱えていて役員はできないけれど、それを人に言いたくないという人は、どう書けばいいのでしょうか。PTA役員には守秘義務もない。ある保護者が裁判官のように別の保護者を裁くようなやり方は、納得できません」(前出の女性)

 PTA退会の動きが、さざ波のように広がっている。「#PTAやめたの私だ」のハッシュタグで退会までのプロセスを発信する人も現れた。

 本来「任意加入」の組織だが、多くのPTAはそれを積極的には周知せず、すべての保護者の入会を前提にしてきた。しかし、憲法学者の木村草太さんが強制的な加入や会費の徴収など「違法PTA」の問題を指摘。2月に和解した本のPTA訴訟では、入退会の自由をPTA側が保護者に周知することが和解条項に盛り込まれた。

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