世界の「ウチナーンチュ」が里帰り、沖縄人としての団結

沖縄問題

2016/11/09 16:00

 クライマックスは30日の閉会式。スタジアムのスタンドを国内外半々、約1万5千人のウチナーンチュが埋め尽くした。

二人はたくさん働いた
わき目もふらず働いた
やがて三線鳴りやんだ
やがて三線鳴りやんだ
夜空ン星に登りました

 アルゼンチン2世・大城バネサさんが歌う「三線のかほり(移民の唄)」に涙ぐむ高齢の参加者たち。

 大会実行委員会会長の翁長雄志沖縄県知事は「沖縄を愛するすべての人々が、ウチナーンチュが心を一つにすることを祝福し、ウチナーンチュであることを誇りに思うことを願います」と述べ、若い県系3世の発案で、この10月30日を「世界のウチナーンチュの日」と定めたことを発表した。

「サンキュー・ヴェリー・マッチ」
「ムチャス・グラシアス」
「ムイント・オブリガード」

 知事が各国語で謝辞を述べるたびに、スタンドに陣取るそれぞれの国の訪日団が大歓声を上げる。やがて会場は、割れんばかりの「ウチナーンチュ・コール」に包まれた。

 米軍基地問題で「イデオロギーよりアイデンティティー」と保革連帯を訴えて当選した翁長知事。その任期のほぼ半ばに開かれた第6回世界のウチナーンチュ大会は、国境を超えたアイデンティティーを高らかにうたい上げ、過去最大の盛り上がりを見せた。

 もちろんイベントそのものに政治色は一切ない。だが、「この高揚は、底流では政治的な意識にもつながっている」と移民史研究者の金城宏幸・琉球大学教授は解説する。

●出会いが新鮮な刺激に

 教授によれば、海外には世界のウチナーンチュ大会と酷似したイベントが存在するという。スペインのバスク自治州政府公認の団体が95年から4年に1度、各国のバスク系同胞を集めて開いている「世界バスク系コミュニティ会議」だ。

 独自の言語や文化を持つバスクの人々は、スペイン内戦ではドイツ軍によるゲルニカ爆撃の悲劇を体験し、フランコ独裁政権の時代には迫害を避け、多くの住民が海外に流出した。しかし、移民たちは散り散りになりながらもアイデンティティーの象徴として言語を伝承し、近年では故国での祭典を開くようになった。

「沖縄の活動はまだ、目的が明確に意識されていませんが、『島くとぅば』(沖縄方言)の復興や海外ネットワークを強化する動きは、アイデンティティーを意識的に守るバスク人の運動と驚くほど似ています。とくに“日本人化”が進む沖縄の若い世代には、海外ウチナーンチュとの出会いは新鮮な刺激になっていると思います」

 前回大会からそうした“うねり”を感じ始めたという教授は、今大会のさらなる高揚を見て、人々の意識変化の胎動を確信するようになったという。

 多くの参加者はシンプルに「感動」を語るだけだったが、教授の洞察を伝えると、得心したように頷く人たちもいた。(ノンフィクションライター・三山喬)

AERA 2016年11月14日号

1 2 3

あわせて読みたい

  • 沖縄独立はこのようにして可能だ

    沖縄独立はこのようにして可能だ

    AERA

    6/25

    翁長沖縄県知事が人々を熱狂させるワケ 安倍政権が“カリスマ”を生み出した

    翁長沖縄県知事が人々を熱狂させるワケ 安倍政権が“カリスマ”を生み出した

    AERA

    5/25

  • 「米軍出ていけ」は排除的発言? ヘイトスピーチで揺れる沖縄

    「米軍出ていけ」は排除的発言? ヘイトスピーチで揺れる沖縄

    週刊朝日

    5/13

    「金融リテラシー」最下位の山梨 理由は「無尽」の影響?【東日本編】

    「金融リテラシー」最下位の山梨 理由は「無尽」の影響?【東日本編】

    週刊朝日

    9/12

  • 1位奈良、2位香川、3位京都…お金の県民性を分析【西日本編】

    1位奈良、2位香川、3位京都…お金の県民性を分析【西日本編】

    週刊朝日

    9/12

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す