三重県松阪市立三雲中 実技教科でもiPadは大活躍。美術では遠近法で描いた図を先生が電子黒板で拡大し、細部をアドバイス。体育では動画を撮ることで、体の動きを客観的に見ることができる。家庭科でも、まつり縫いや玉止めの仕方を動画で確認しながら、作業していた(撮影/関口達朗)
三重県松阪市立三雲中 
実技教科でもiPadは大活躍。美術では遠近法で描いた図を先生が電子黒板で拡大し、細部をアドバイス。体育では動画を撮ることで、体の動きを客観的に見ることができる。家庭科でも、まつり縫いや玉止めの仕方を動画で確認しながら、作業していた(撮影/関口達朗)
東京都小金井市立前原小 6年生のプログラミングの授業。松田校長は危機感をこう表現する。「親も教師も、20年前の自分たちが受けた教育を前提に考えている。必要なのは子どもたちが社会に出る20年後を見据えること。そうでなければ学校で学ぶことと社会で必要とされるスキルの間に、40年のギャップが生じる」(撮影/関口達朗)
東京都小金井市立前原小 
6年生のプログラミングの授業。松田校長は危機感をこう表現する。「親も教師も、20年前の自分たちが受けた教育を前提に考えている。必要なのは子どもたちが社会に出る20年後を見据えること。そうでなければ学校で学ぶことと社会で必要とされるスキルの間に、40年のギャップが生じる」(撮影/関口達朗)

 首都圏などでは小中学受験が盛んだが、日本の小中学生の9割超は公立校で学んでいる。21世紀型教育も、公立にどう広げていくかが課題だ。注目の分野で一歩先を行く学校を取材した。

*  *  *

 タブレットや電子黒板などを活用するICT(情報通信技術)教育。旗を振る政府は「2020年代に1人1台の情報端末」を目標に掲げるが、すでに4年前からそれが現実になっている公立校がある。三重県松阪市立三雲中学校だ。

「今、うちの学校ではiPadは必需品です。忘れると、保護者が届けに来るほど。すべての情報がここに入っています」

 そう言って川口朋史校長が見せてくれたのは、同校の生徒や教職員が使う情報共有アプリ。時間割のほかに、各教科のオリジナル教材や、保護者向けの学級通信、職員用の掲示板などのアイコンがずらりと並んでいる。

●班の結論は電子黒板に

 同校の生徒と教師が1人1台iPadを持つようになったのは2012年。総務省・文部科学省が当時進めていたICT教育推進の実証研究校になったのがきっかけだ。それは教師にとって青天の霹靂だったという。ICTには全員が素人。決まった瞬間の職員室では、

「え? なんでうちが?」

 とため息が漏れた。そこで当時の校長は宣言した。

「私たちのような普通の中学の普通の先生が活用できるようにならなければ、全国に普及するはずがありません。できるところまでやりましょう」

 ゼロからの出発で何が、どう変わったのか──。

「今日はいきなりドリルから始めます。iPadを立ち上げて。制限時間は6分ね」

 2年生の国語では開始早々、豊田多希子研究主任が、前回習った敬語の使い方をドリルで確認するよう指示している。慣れた手つきで生徒は画面に表示される問題を解いていく。すぐに○×が出て、ゲームのようだ。その間、先生は次に使うプリントを配布し、ドリルに手こずっている生徒をフォローする。

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