小池氏は会見で自民党の候補者擁立プロセスを「どこで何を決めているか不透明」と批判。提出した推薦依頼を取り下げると、続けて谷垣禎一党幹事長に進退伺の意向を伝えた。就任直後に都議会を解散する考えがあることも表明。矢継ぎ早の演出で“敵”との駆け引きをメディアに巧みに取り上げさせている。

 一方、自民党都連会長代行の下村博文(はくぶん)氏は、こうした小池氏の動きに疑問を投げかける。

「離党や除名などの処分も覚悟で出馬したいということだと思うが、進退の判断を幹事長に預けてしまい、覚悟が本物かどうかわからない。選挙だけ考えたら『悲劇のヒロイン』のストーリーは一部成功しているのだろうが、知事になった後の都政運営も考えているのか。都民から選ばれた都議会を冒頭解散することはありえない」

●支援者になじみがない

 下村氏によると党内では、小池氏が推薦依頼を取り下げなければ、同様に推薦依頼を出していた増田氏と政策を論じ合う立会演説会などの場を設け、候補者を決める考えもあったという。

「小池さんと増田さんでオープンな議論をしてほしかった。その結果、小池さんが推薦を得る可能性もゼロではなかったはず。自民党所属の国会議員として残念だった」(下村氏)

 自民と公明の推薦を得た増田氏は、旧建設省でキャリアをスタートすると、岩手県知事を3期12年務めるなど「実務型」の候補として申し分ない実績がある。

 ただ、増田氏はかつて著書などで、介護や医療の人的資源やニーズが東京圏に偏ることで、地方が疲弊する可能性を指摘。東京一極集中の問題を語りながら、都知事をめざすことについて「問題提起した人間として、中に入って解決するのがけじめ」(7月13日の候補者共同記者会見)などと語っている。

 また、前出の永田町関係者はこんな見方をする。

「増田さんは岩手県の元知事で、東京とは関係のない人物。都民や自民党の支援者にとってはなじみがなく、『よそ者』と感じていると思う。一方で支援者にとっては、東京選出の国会議員である小池さんこそ、自民党の候補だと映るのではないか」

 都知事選は参院選直後の夏場の選挙でもあり、自民党が強みとする組織の動員力についても、

「1カ月に2度も選挙があれば力が入らない」(同前)

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