「生卵の卵白には菌を分解する酵素リゾチームが多く含まれています。これが調理で失われるため、腐敗が速くなるのです」

 このように、最大約2カ月生食可能の卵でも、様々な条件で安全な食の期限が異なるのだ。

 生産者と消費者をつなぐ食の現場ではどうなっているのだろうか。東京都内に4店舗と、パン工房、居酒屋を構えるスーパーマーケット「アキダイ」関町本店を訪ねた。

「うちでは、生鮮食品には各分野ごとに職人がいて、それぞれのプロが市場で仕入れを行い、消費期限を定めています」

 と話す社長の秋葉弘道さんによれば、野菜、果物、魚、肉といった生鮮食品の場合、「新しいものが必ずしも長くもつとは限らない」という。

●加工すれば貼り替え可

 たとえば、レタス。野菜や果物は気候の影響が大きい。好条件で収穫された仕入れ3日後のレタスと、悪条件で収穫された仕入れ当日のレタスでは、前者のほうが長もちする。野菜や果物は消費期限の表示義務はないが、プロの目で鮮度を判断し、売る順番を決めるという。

 消費者として気になるのは、古くなった魚をフライにしたり、期限切れの肉を味付けしたり、ミンチ肉にして売ったりしていないのか、ということだ。アキダイでは、フライ用、ハンバーグ用などと専用に仕入れ、使い回しはしていないという。

 だが、「どう売るか」は業者次第だ。「古くなった野菜を漬物に」「消費期限ギリギリのトンカツ用ロース肉を揚げてトンカツに。トンカツが消費期限ギリギリになったらカツ丼に」といった売り方もある。消費期限、賞味期限は加工した時点で期限を新たに設定でき、期限ラベルの貼り替えも合法的に可能だからだ。だからこそ、明示された期限は本当に安全なのかと疑問がわく。
 東京都福祉保健局によると、消費期限・賞味期限を決める検査には、細菌数などを調べる微生物試験、粘りや濁りなどを測定する理化学試験、色や匂いといった五感で調べる官能試験などがあり、どの結果を消費期限・賞味期限の「根拠」とするかはメーカーや販売業者次第だという。

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