「五感ほど信頼できるものはない」と同局の担当者も言うほど、現場で「五感」が重視されている場合も多い。消費者である私たちも、表示を参考にしつつ、匂いや風味などで健康的に、おいしく食べられるのかを判断する必要がありそうだ。

●菌の増殖に注意

 管理栄養士の柴田真希さんは「安全な食」を心がけるには、消費期限だけを気にするのではダメだと指摘する。

「消費期限を気にしていても、食中毒を引き起こす菌の増殖には無頓着な人が少なくない」

 柴田さんが挙げる「よく見かける危険行為」は、魚や肉を扱った手、包丁、まな板で、生で食べる食品に触れること。魚や肉が新鮮でも、食中毒の原因菌が存在していることがあり、流水で洗う程度では不十分だ。意外な盲点が、冷蔵庫や電子レンジの取っ手。魚や肉を触った手で何度も触れることで、菌が思っている以上に大量に付着している。これらが、生で食べる食品に付いてしまうという。

「常温で保存しない」「作ったらすぐに食べる」も鉄則。柴田さんは職業柄、食中毒対策には人一倍神経質だが、以前、料理本の撮影用に作ったシーフードグラタンを台所のテーブルに3時間ほど放置したところ、納豆のようにネバネバ糸を引く状態になった。気温が上がる夏場は特に注意が必要だ。

 前出の秋葉さんはこう話す。

「売る側が食の安全性に慎重になるのは当然。しかし、お客様がどう食品を扱うかも重要」

 スーパーで買った刺し身を持ち歩くか、すぐ冷蔵庫へしまうかでも大きく違う。さらに、異変を感じた時どう対応するかによっても。結局、食の安全で求められるのは、消費期限・賞味期限以上に、自己判断力なのかもしれない。(ライター・羽根田真智)

■消費期限にまつわるQ&A

【Q:魚や肉は冷凍すればいつまでも悪くならない?】
A:冷凍によって菌の増殖が抑制されるので、冷蔵庫に入れるより長持ちします。しかし、タンパク質が変性し味が落ちます。保存するなら、トレーから出してペーパータオルで水気をふきとり、ラップで小分けにし、ペーパータオルで包んで保冷剤を載せたうえで、チルドルームで保存が良いでしょう。(東京農業大学元教授・徳江千代子さん)

【Q:購入1カ月後の納豆は食べてOK?】
A:発酵食品である納豆は、放置すると納豆菌が繁殖しネバネバが増します。そのうち繁殖が弱まってネバネバが減り、茶色くなり、1カ月ほど置くと表面に白っぽいものが出てきます。これはアミノ酸で、食べても問題ありません。(徳江さん)

【Q:梅干しや漬物、味噌など保存食は何年ももつ?】
A:本来は何年ももちましたが、今は塩分濃度がぐっと下がり、保存食として成り立たなくなっています。表示された期限内に食べたほうがいいでしょう。(徳江さん)

【Q:対面販売の魚や肉に消費期限がついていませんが……】
A:魚や肉は加工され、あらかじめパックされたものが対象。魚を客の要望で刺し身にし、パックした場合は消費期限の表示義務がない。店の人にいつまでに食べたほうがいいか聞き、生ものは早めに消費しましょう。(東京都福祉保健局担当者)

AERA 2016年7月25日号