「舞台となった婚活サイトは複数ですが、それぞれ勧誘の場として使われているだけですね。被害者は30~40代で女性8割、男性2割。しっかりした仕事に就いていて、安定収入のある方たちがほとんどです。だます側に男性スタッフが多い関係で、女性の被害者が多くなっているとみられます」

 結婚相手を探すサイトだから、年収や職業などの個人情報は満載。“獲物”を見定めるには、これ以上の場はない。だますほうは架空の個人情報で登録し、並行して何人ものターゲットとやり取り。サイトを通さずに会うためにメールアドレスを聞き出したら、「一度会いましょう」と誘い出す。会うたびに、好意を寄せているかのように褒めたりおだてたり。そして何度目かのデートで、こう切り出す。

<僕はコンサルやってるんだけど、あなたは税金払い過ぎてるみたいだね。今度、源泉徴収票持ってきて>

 次のデートではこうなる。

<これは税金払い過ぎだ。投資用マンションとか考えたことある? 借金して買えば税金も戻ってくるし、ローン払い終えたら家賃が年金みたいに入ってくるんだよ>

 女性が聞けば、マンションの価格は2500万円するという。親に内緒で買える額ではないと尻込みすると、

<だからダメなんだよ。将来はきちんと自分で設計しないと。親なんかに言ったら反対されるだけだよ>

 ここで本当に親に相談して目を覚まし、難を逃れた人もいるだろう。しかし、この壁を突破されると、あとは一気に契約まで進んでしまうという。

「出会って2~3カ月で契約に持っていかれることが多い。『結婚しよう』みたいな具体的な言葉はほぼなし。デートを重ねて食事はするが、深い関係にまでならないのが基本。なかには、デートに“上司”を同席させて『こいつはあなたにゾッコンなんですよ』なんて言わせるなど、手の込んだ芝居をするケースもあります」(平澤弁護士)

 2500万円のマンション購入費用のうち、約9割の2200万円分を銀行が融資するスキームがパッケージされていて、35年ローンを組めば一丁上がりだ。必要な書類や手続きの一切は、“親切な恋人”が滞りなく進めてくれる。マンションを一棟買いした不動産会社が、投資利回りから逆算し、1800万円が相場の物件を2500万円で販売。差額の700万円が勧誘会社に手数料として落ちるパターンだという。(アエラ編集部)

AERA  2016年5月23日号より抜粋