婚活サイトで知り合った異性の勧めで、ローンを組んで購入させられた投資用マンションの例。買値が相場より高く、投資利回りが期待できないとして訴訟になっている(撮影/編集部・大平誠)
婚活サイトで知り合った異性の勧めで、ローンを組んで購入させられた投資用マンションの例。買値が相場より高く、投資利回りが期待できないとして訴訟になっている(撮影/編集部・大平誠)

 婚活サイトを舞台にした投資用マンションの詐欺的な勧誘・販売。不動産会社、勧誘会社、銀行が仕掛けるデート商法の手口とは?

 北千住、錦糸町、練馬、横浜、川口……。東京都内や近県のベッドタウンに点在するマンションは、最寄り駅までの距離や立地条件、ブランド名や戸数など、特徴はさまざまだ。

 共通するのは専有面積が25平方メートル前後と、婚活サイトで知り合った2人が住むには狭すぎる投資用物件だということ。適正価格で購入し賃貸に出せば利回りを生むかもしれないが、購入価格が相場より割高で、もうけが出るほどの家賃が取れないとすれば、高額な住宅ローンを抱えて暗澹たる気持ちになるに違いない。おまけに親身になって将来を案じ、購入を勧めてくれた“恋人”とは、連絡すらつかなくなったとしたら……。

 これは2009~13年ごろ、実際に起きた話である。売り抜けてもうけた側は笑いが止まらないだろうが、だまされたほうは踏んだり蹴ったりもいいところだ。詐欺的商法だが、刑事事件で責任を問うにはハードルが高い。犯意の立証が極めて難しいからだ。

 ならば民事で被害回復をと、東京のクレジット・リース被害対策弁護団(団長・瀬戸和宏弁護士)が「投資用マンション被害窓口」(担当・平澤慎一弁護士)を立ち上げ、14年2月から15年10月までの間に、原告計26人による3次にわたる集団訴訟を東京地裁に提起した。

 集団訴訟はいずれも係争中だが、原告1人で先行して提訴していた別の裁判ではこの3月に一審判決があり、裁判所は被告の勧誘会社と勧誘員に1355万円を支払うよう命じた。

 このケースは男性が被害者で、婚活サイトで知り合った勧誘会社の女性社員の勧めで埼玉県内のマンションの一室を約2300万円で購入したものの、契約後は疎遠になり、相場より1千万円以上高額だったことが判明したという典型的事案だ。

 他にはどんなケースがあるのか。平澤弁護士は言う。

次のページ