新顔側は当初、「固定化回避はどうするのか」の質問に答えず、後に「移設条件なしの返還を」と唱え始めた。この「ブレ」も有権者に不安を与えた。

 深夜・早朝から基地の騒音にさらされる普天間の地元の思いは、県内のどの地域と比べても複雑だ。私が取材した中でも、「普天間にも辺野古にも基地はいらない」と言う老人もいれば、「移設先はどこでもいいから早く撤去を」と話す主婦、「互いに譲り、一致できる点を探るのが政治では」と、法廷闘争に突き進む政府と沖縄県双方への不満をぶちまける若者もいた。

 共通するのは、普天間返還合意から今年で20年になっても、閉鎖のめどすら立たない現状へのいらだちだけだ。

 沖縄タイムス、朝日新聞などが行った投票日の出口調査では、有権者の57%は辺野古移設に反対だった。しかし、その約4分の1が佐喜真氏に投票したと答えており、6千票の差はこれでほぼ説明できてしまう。

「県内移設も嫌だが固定化もダメ」と考える有権者が、固定化阻止だけは明確だった佐喜真氏に投票した結果が今回の大勝だったのだ。

AERA 2016年2月8日号より抜粋