「売り方次第で、10%アップさせることは可能です」(※イメージ)
「売り方次第で、10%アップさせることは可能です」(※イメージ)

 一般的にマンションの新築価格は、バブル期の1990年がピークで、デフレ終盤の2002年前後が底値だったといわれる。だが、底値でマンションを買えた運のいい人は、少数だろう。市況を変えることは無理でも、高値で売り抜けることはできないものか。その道のプロに話を聞いた。

「売り方次第で、10%アップさせることは可能です」

 こう語るのは、『プロだけが知っている!中古住宅の魅せ方・売り方』(朝日新聞出版)の著者で、不動産仲介「バイヤーズスタイル」代表の高橋正典さん。高橋さんによると、価格アップには仲介会社の担当者の見極めが最も大切だという。まず、「このマンションを欲しがっている人がいます」などと書かれた投げ込みチラシは「信用しないほうがいい」と語る。

「相場よりも高値で買い取れるかのように書いてありますが、部屋ごとに間取りも方角も違うので、自分の家とマッチングすることは99%ない。最低でも、不動産会社を大手2社、地域密着店を1社回ってみて、信用できる担当者を探しましょう」

 大手は物件数も多く、情報が集まりやすい。しかし、担当者が多くの物件を担当しているので、高額物件の顧客が優先されたり、交渉を早く切り上げられ、「安売り」されたりする危険もある。地域密着店は、規模が小さいぶん親身に対応してもらえるが、法律の知識が欠如していたり、買い手を見つけるのに時間がかかったりするケースもある。

「『いまが売り時です』『高すぎて売れません』と簡単に言う担当者はダメ。すぐに委任を取りたい、安く売り抜けて手早く手数料をもらいたいという意識が透けて見えます」(高橋さん)

 逆に、一括査定などで相場よりも大幅に高い価格を提示してくる会社にも注意が必要だ。それにつられて委任しても、価格が高ければ、当然売れない。すると「やはり値段を下げましょう」と提案されて、ずるずると長期間売ることになる。その間、「両手取引」と呼ばれる手法でもうけようとする輩もいる。

「売り手や買い手が不動産業者に支払う仲介手数料は通常、物件価格のそれぞれ3%。担当者が、3千万円の物件を頑張って3200万円で売っても、手数料は6万円しか増えない。でも、買い手も自分で見つければ、手数料は2倍になる。ダラダラと価格を下げる間に、『いまなら安く買えます』と言って買い手を見つける手法は、大手でも横行しています」(高橋さん)

 逆に、「売りのタイミングを適切に提案できる」「物件のデメリットも告知してくれる」「賃貸など売却以外の選択肢を提示できる」といった担当者は信用できるという。とにかく、売り急がないことが肝心なのだ。そのうえで、買い手に「建物の価値」を証明することが価格アップにつながる、と高橋さんは言う。

「買い手が気にするのは『見えない部分の瑕疵(かし)』です。そこで私は、建物の状態を検査する『インスペクション』を行って診断書を取ること、瑕疵を補償する『既存住宅売買瑕疵保険』に入っておくことを勧めます。買ってからも安心できる物件は、高く売れます。二つで15万円くらいの費用はかかりますが、これで築5年の物件が他社査定より700万円も高く売れたケースもあります」

AERA  2015年11月30日号より抜粋