ただ、佐和学長が「想定の範囲内」と言うように、ロクテンハチ通知は、突然、降って湧いたものではない。実際、滋賀大も、数年前から組織改編の準備を進めていた。他大学も同様で、16年度には八つの国立大学で新学部の設置がすでに決まっている。

 新設される8学部は、それぞれの地域の課題に即したものが多い。文科省から「社会的要請の高い分野」への学部転換を迫られるなか、少子高齢化や地場産業の衰退が進む地方にあっては、最適のテーマなのだろう。「有田焼」など地元の伝統工芸を支える担い手を育成したり、畜産業と連携したり。いずれも定員枠は、主に教員養成課程の定員を減らすことで捻出する。

 地方国立大学関係者の心胆を寒からしめたロクテンハチ通知。その原点は14年前、小泉政権下の01年6月にさかのぼる。

 世界で戦える大学づくりを目指した文科省は、競争原理の導入によるレベルアップと予算の重点配布を目的とした「大学の構造改革の方針」を提示した。その中に、法人化による民間手法の導入などと並び、「教員養成系などは、規模の縮小・再編」「県域を越えた大学・学部間の再編・統合」を進め、「国立大学の数の大幅な削減を目指す」との方針が記され、遠山敦子文科相(当時)は国立大学長会議の席上で、こう発言したのだ。

「国立大学も改善に取り組んできたが、国民の期待に十分応えているとはいえず、産業界から批判も出ている。大学の構造改革なくして、日本経済の再生、発展はない」

 そして04年、99の国立大学が89法人に再編され、国立大学法人化がスタート。しばらくは「始動期」とされ目立った動きはなかったが、13年11月、各大学の強みや社会的役割を踏まえた改革を実施し、その取り組み次第で運営費交付金を重点支援することを盛り込んだ「大学改革プラン」が出されるに至った。

AERA 2015年11月23日号より抜粋