プレゼンテーション講師前田鎌利さん(42)まえだ・かまり/1973生まれ。「継末―TUGUMI―」代表理事、書家。元ソフトバンク勤務。著書に『社内プレゼンの資料作成術』(撮影/高井正彦)
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プレゼンテーション講師
前田鎌利
さん(42)
まえだ・かまり/1973生まれ。「継末―TUGUMI―」代表理事、書家。元ソフトバンク勤務。著書に『社内プレゼンの資料作成術』(撮影/高井正彦)

 企業で、学校で、求められるプレゼン力。短時間で伝えるためには、「シンプルさ」が重要だ。

 わずか3分。ソフトバンク社内で与えられる一件あたりのプレゼン時間だ。トップから次々と与えられる課題に、対応策や新事業を考えてプレゼンする。会議では多くの案件を扱うため、一件のプレゼン時間は極端に限られている。たいてい3分程度で、時間を要する案件でもせいぜい5分しか与えられない。

 前田鎌利さん(42)は、ソフトバンク社員時代、孫正義会長(当時社長)の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミアで、プレゼン1位の成績を残した。3分で言いたいことを伝えるプレゼンのコツを「シンプルかつロジカル」という。

 スキルが評価されて社内のプレゼン講師を拝命。前田さんの技術を使った部署では、決裁スピードが1.5~2倍に上がった。孫さんが社内外でプレゼンするときの資料も作ったことがある。

 プレゼンをシンプルにするには、盛り込む情報を1文字単位で捨てねばならない。そのため、目安を設けた。プレゼン資料は、作成ソフトを使って5枚から多くても9枚。1枚のスライドは10秒で読み解けるよう設計する。

 なかでもこだわったのは、文字数。タイトルやキーメッセージは13文字以内が原則。認知心理学では、一目で理解できる限界が13文字と言われている。

「決裁者がスライドを『読む』と、理解が進まない。資料では『です』『ます』すらも省き、視覚的に理解してもらう」

 そういえば、ヤフートピックスの文字数も13文字以内で設計されている。この短さなら、一目でメッセージが理解できる。

 極限までシンプルにすれば、プレゼンは3分でできる。でも捨ててはならないものもある。準備に費やす時間だ。

 例えば、プレゼン資料は必ず1日寝かせる。つまり本番の2日前には完成させ、前日に再度確認する。時間を置けば、客観的な目で内容の良しあしを判断できるからだ。

「1日置くことで、決裁者の視点を手に入れることができる。決裁者とシンクロできたら、プレゼンはよりシンプルになる」

AERA 2015年10月12日号より抜粋