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SNSの「弱いつながり」こそが生む価値とは

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増田直紀ますだ・なおき/東京大学大学院准教授を経て、現在、英ブリストル大学上級講師。著書に『私たちはどうつながっているのか』(中公新書)など(写真:本人提供)

増田直紀
ますだ・なおき/東京大学大学院准教授を経て、現在、英ブリストル大学上級講師。著書に『私たちはどうつながっているのか』(中公新書)など(写真:本人提供)

 日本人は家族や同僚など、同質で強いつながりを大事にしてきた。だが、これからの時代に必要な人脈は、真逆だ。異質で弱いつながりこそが、自分を助けてくれるという。ネットワーク科学の専門家、増田直紀さんは次のように話す。

*  *  *
 日本人の「人脈感」は、SNSと東日本大震災で大きく変わりました。日本人は「強いつながり」を好む傾向があります。家族、親戚や同僚など、強くつながっている人を信頼します。その一例が、コネ入社です。

 でも2000年代に入り、ミクシィやツイッター、フェイスブックなどのSNSが普及し、「弱いつながり」が増えました。遠い場所に住む友達とも、1度しか会ったことがない人とも、つながりを維持できるようになったからです。

 投稿をウォッチしているだけで、知らない土地や業界の情報も知ることができる。SNSによって、弱いつながりにも価値があると分かりました。

 実は、弱いつながりこそが価値を生む、ということは、1970年代から学者の間では言われています。

 例えば転職したいと思ったとき。強いつながりの友人に相談するより、異業種で働く知り合いのほうが、突破口を生みやすいです。友人は価値観や人脈が似通っているため、悩みに共感はしてくれても、悩みの解決や転職先の紹介にはつながりづらいからです。

 ビジネス界でも、例えばコンビニ同士より、コンビニと銀行が提携したほうが、より利便性の高いサービスを提供できる。これを「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」と言いますが、SNSの普及はそれを実感に変えてくれたように思います。

 東日本大震災も、私たちの「人脈感」を大きく変えました。もともと同質的なコミュニティーを築く傾向にあった日本人ですが、「赤の他人」とも人脈を築けるようになったと思います。

 日本人は、アメリカ人よりも人を信頼しない、という日本発の研究があります。アメリカ人のほうが個人主義でドライな印象もあり、逆ではないかと思われがちですが、相手を「赤の他人」に限定すると、納得できます。

 日本人は、同じ地域、同じ会社、といった「同じコミュニティーの人」を強く信頼する傾向にあり、身近な人なら裏切らないだろう、と考えます。でもこの現象は「信頼」ではなく「安心」であり、内にこもることで新しい情報が入ってきにくくなる、と言われています。知り合いの業者だけからモノを調達すると、価格競争が抑制されて価格が高くなるように、弊害を生むこともあるのです。

 一方、赤の他人を信頼する度合いの高い人は、初対面の人が信頼に足る人かを見極める能力があることが分かっています。信頼があれば、全く異質のコミュニティーにいる人ともつながりを作り、情報交換を行える。日本人は赤の他人をもっと信頼することで、さらに得をするはずです。

 震災時は、これが立証されたように思います。他地域からやってきたボランティアなど、本来別のコミュニティーに属する人同士がつながり、物資や情報を提供し合いました。震災という大惨事を通じて、日本人の「人脈感」は少し変わったのかもしれません。

AERA 2015年6月1日号より抜粋


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