畑を買った本間真理子さん(右)と、「母を応援する」と話す息子で司法書士の本間聡さん(27、左)(撮影/今村拓馬)
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伝統製法のワインは来年早々に発売する(撮影/今村拓馬)

 8千年前に始まるワイン文化発祥の地で、在来種のぶどうが500種類以上に及ぶとされるグルジア。カスピ海と黒海にはさまれたこの国にぶどう畑を買い、ワイン造りに乗り出した日本人がいる。

 本間真理子さん(58)が、愛好家が注目するグルジアワインを輸入販売するH&Nワインジャパン株式会社を起こしたのは、2011年11月のことだ。

「貴族が所有する畑が売りに出た。長年ワイン事業に携わるグルジア人事業家が、資金提供してくれる日本人を探している」

 知人からそう聞き、グルジア人のコバ・ナダレイシュビリさん(42)と共同購入したのがきっかけだ。最初に買った24ヘクタールの畑は、農薬や化学肥料を使ったことがなく、国が保証する最高品質の土壌。

「発祥の地で、自分のワインを造るロマンを感じた」

 そう話す本間さんはしかし、資産家ではない。国際NGO職員として30年間、発展途上国の母子の命を守る活動に従事し、世界中を駆け回ってきた。

 東日本大震災で岩手県陸前高田市などと仕事で関わり、「被災地支援に残りの人生を捧げたい」と辞職した頃、ワイン好きの元同僚から今回の話が舞い込む。ワイナリーオーナーになって復興支援をしよう、と退職金をつぎ込んだ。

 現地へ行ったのは12年2月。首都トビリシから北東へ車で3時間半。グルジア最大のぶどう産地、カヘティに着いた。

「雪の中、行けども行けども自分たちの畑。感動しました」

 ところが、買った土地には肝心の醸造工場がなく、資金集めに奔走する日々が始まる。 資本家から資金を集めて醸造タンクを買い、畑に井戸を掘り、発電装置を作ってガスを引く。

 畑から収穫したぶどうは現地の工場に委託して醸造し販売。今年は干ばつでぶどうが全滅したが、「洗練された味のワイン」で知られる醸造家のバチャーナ・カルバシさんとの共同醸造が新たに決まった。自社工場は来年春には完成予定だ。

AERA  2014年12月8日号より抜粋

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