(撮影/写真部・関口達朗)
(撮影/写真部・関口達朗)

 好きで結婚したはずの夫を、いつしか愛せなくなってしまった妻たち。そんな彼女たちに、新しい考え方を提唱する本が出ている。妻たちからは賛否両論あるようだ。

<同じ人間だと思うからいけないのです。「犬」だと思えばいいのです>

 小学生の子どもがいる母親たちに人気の学習塾「花まる学習会」の高濱正伸代表は、著書『夫は犬だと思えばいい。』で妻に意識改革を求めている。「犬」には真っ先においしいご飯を出し、日曜日にゴロゴロさせ、上手に褒め、子どもの前で「いかにお父さんがすばらしい人なのか」を繰り返し言い続ける……。

 著者は、夫たちがタイトルにムッとするだろうと想定していたが、ムッとしたのは妻たちだ。夫に期待することを諦めてしまったら、誰が夫の役割をしてくれるのか。土俵を降りるくせに、家族の一員として愛されたいなんて厚かましい!

 一部には「夫は犬」に納得できる妻もいる。それは夫が「稼げる犬」だからだ。自営業の女性(39)は昨年末、3回目となる母子だけのスキー旅行の準備をしていた。4日間も留守にするため、自宅で仕事中のデザイナーの夫(46)にも念のため声をかけてみた。返ってきたのは一言。

「別にスキーはやらなくてもいいかな」

 ハイわかりました。「うちはよそと違うの」と例年と同様に子どもたちに言い聞かせ、母子3人で旅立った。

 出産後から夫の浮気や暴力、育児放棄に悩まされてきた。女性はカウンセリングに通い、何度も泣きながら不満を吐き出した。到達した結論は、「夫は生活費を出してくれるベビーシッターなのだ」

 下の子が5歳になり、夫という「番犬」が自宅にいるだけで、自分は彼氏や友人と飲みに行ける。年収1千万円の夫に家計を任せ、月30 万円の自分の手取りは貯蓄に回しても、生活には困らない。

「今のうちに、したたかに自立の準備をするのみです」

AERA 2014年2月24日号より抜粋