槙田雄司さん(43)(マキタスポーツ)文筆家、お笑い芸人お笑い芸人としては有名ミュージシャンの作風をパスティーシュする「作詞作曲ものまね」で知られる。『一億総ツッコミ時代』で、批判や批評ばかり先行する日本に“「ボケ」と「ベタ」を復権させよ!”と主張した。アルバム「指定無罪」発売中(撮影/写真部・関口達朗)
槙田雄司さん(43)(マキタスポーツ)
文筆家、お笑い芸人

お笑い芸人としては有名ミュージシャンの作風をパスティーシュする「作詞作曲ものまね」で知られる。『一億総ツッコミ時代』で、批判や批評ばかり先行する日本に“「ボケ」と「ベタ」を復権させよ!”と主張した。アルバム「指定無罪」発売中(撮影/写真部・関口達朗)
タカハシマコトさん(38)博報堂コピーライター東日本大震災後、東北の日本酒で花見をすすめる活動「ハナサケニッポン」を立ち上げた。近著『ツッコミュニケーション』でツッコミやリアクションを意識した企業コミュニケーションの有効性を説く(撮影/高井正彦)
タカハシマコトさん(38)
博報堂コピーライター

東日本大震災後、東北の日本酒で花見をすすめる活動「ハナサケニッポン」を立ち上げた。近著『ツッコミュニケーション』でツッコミやリアクションを意識した企業コミュニケーションの有効性を説く(撮影/高井正彦)

「あいつ、サムいな」「そこはツッコまないと」「いま、スベりましたよね?」「引くわー」。自分では何もしないのに他人がすることを批評、批判、揚げ足取りして終わらせるような「ツッコミ」が増え、閉塞感が増している──。

 そう指摘した新書『一億総ツッコミ時代』が昨年、話題を呼んだ。お笑い芸人「マキタスポーツ」としても活躍する著者の槙田雄司さん(43)は、「ツッコミは自ら発信し失敗するリスクも背負う『ボケ』よりも一見楽に見える。インターネットの発展で誰でもいろんなことにツッコめるようになり、ツッコミ過多の傾向が加速した」と解説する。飲み会の場でリラックスしていると「なんか普通じゃないですか!」と若手芸人がツッコんでくるようなことも増えた。

「お前、俺とそういう(安直なツッコミとボケの)レベルで会話しようとしているわけ? と指摘します。大人なんですから、もっとちゃんと本質的な話をするべきです」(槙田さん)

 リスクを背負い自分から動ける「ボケ志向」になろう、そう槙田さんは著書に記した。とはいえ、ツッコミ過多に慣れた日本人にとって、いきなりのボケ志向転換はハードルが少々高い。博報堂コピーライターのタカハシマコトさん(38)は今年出版した新書『ツッコミュニケーション』で、〈お笑いにおけるツッコミは、たしかな訓練さえ積めば、ボケに比べてスベるリスクが少ない芸でもあります〉と記した。いいツッコミとは何なのか。ツッコミ達人、成功者の話に耳を傾けてみよう。

 昨年の「THEMANZAI2012」覇者「ハマカーン」の、もともとツッコミだった神田伸一郎さん(36)は、ツッコミに必要なのは「気づきと気遣い、サービス精神ですね」と即答する。

 相手の発言の「面白い」ところに気づく力は当然だが、たとえば相手が自分の名前を紹介する際に「ハナカーンさんです」と噛んでしまった場合、「今噛んだよね?」とただ指摘するだけではなく「そう僕らが鼻を打ったら鼻カーンって、それどういうこと?」と一度乗ってあげることで、ウケるかスベるかを自分で引き取ってあげる。

「ツッコミのうまい人はそういった気遣いができる。気遣いのないツッコミはただの『揚げ足取り』」(神田さん)

AERA 2013年9月30日号