安倍晋三氏は歴史を直視することができない」

 4月27日付の米紙ワシントン・ポスト(WP)に、そんな刺激的な見出しをつけた社説が掲載された。WPといえば、安倍政権の誕生以来、その政策を評価してきた新聞。なぜ、ここにきて批判に転じたのか。

 発端は4月の参院予算委員会。

「(過去の植民地支配と侵略を反省する村山談話を)そのまま継承しているわけではない」
「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない」

 これらの安倍首相の答弁が火を付けた。WPは、歴史は異なる視点から解釈され続けるものであると認めつつ、安倍首相の「釈明」を「自滅的な修正主義」と断じたのだ。ほかの米メディアも、相次いで批判の声をあげた。

 これまでの日本の政治家の失言に比べ、今回なぜ米メディアはここまで過剰な反応をするのか。元外務官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏はこう指摘する。

「問題となった発言全体を見れば大きなブレはない。それなのに、WPまでが批判的な反応をする背景にあるのは、対中国外交に関連したいら立ちです」

 米国にとって、台頭する中国をどう抑え込むかが現在の東アジア外交の主軸にある。その意味で、日米韓の同盟関係がこれまでになく重要になってきている。ところが今回の安倍首相の発言は、その一角である韓国にとって到底容認できるものではなかった。結果として、日米の同盟関係を悪化させる可能性が出てきている、というわけだ。

AERA 2013年5月27日号