「原発ゼロ」を否定する安倍新政権。官邸など足元は原発推進派で固められつつある。

 次期首相安倍晋三と、常に行動をともにすることになる政務担当の首相秘書官に、経済産業省の原発政策のキーマンが就く。12月17日付で資源エネルギー庁次長から官房付に異動になった今井尚哉(54)だ。2006年の第1次安倍内閣でも、安倍の首相秘書官(事務)を務め、今回は2度目の登板だ。

 1982年入省組の「三羽烏」の一人で、将来の事務次官候補と目されている。新日鉄社長、日本経団連会長を務めた今井敬と、元通産事務次官の故今井善衛のおいにあたる。善衛は『官僚たちの夏』(城山三郎著)のモデルとされている。

 民主政権下でも、原発政策に影響力を及ぼした。原発について門外漢だった経済産業相の枝野幸男は、同じ宇都宮高出身の今井を何度となく呼んだ。「大臣、つまりこれはこういうことです」と難解な原子力村の事情を短時間で明快に説明した。「つかみ」の説明能力は霞が関一という評判だ。

 環境庁に出向していた時には、千葉県知事(当時)の堂本暁子と懇意な間柄を築きあげ、「政治的なウイングが広い」と評判だった。

 4人いる首相秘書官の事務担当は通常、財務、外務、経産の各省と警察庁の指定席。経産省から2人の首相秘書官を出すという異例の事態に、省内では「経産内閣と言われないようマスコミとの接触は注意を」と口頭で訓示され、末端の管理職にもメールなどで流れてきた。

AERA 2012年12月31日・2013年1月7日号