平日の夕方や週末になると子どもたちが保護者とともに「スポーツひろば」に通ってくる。クラスに通う発達障害の子どもたちの8割が男子で、バランス感覚などを養う
平日の夕方や週末になると子どもたちが保護者とともに「スポーツひろば」に通ってくる。クラスに通う発達障害の子どもたちの8割が男子で、バランス感覚などを養う

 障害を持つ人に向けて、日本では様々な取り組みが行われているが、そこには海外と大きな違いがあるという。

 障害を持つ人のスポーツ教室を運営しているNPO法人アダプティブワールド(東京都稲城市)の齊藤直理事長(33)は、日体大時代に障害者スポーツを専門とした。在学中に渡米し、障害者スポーツの施設を見学した。帰国して都内の障害者施設で指導員として働き始めたとき、日米の違いに衝撃を受けた。

「アメリカでは障害を持つ人でもまず『何をしたいか』という目標に向かって努力し、それを専門家がサポートします。ところが日本では、『何ができるか』と現時点でできることに限定し、障害者の可能性を伸ばそうとしていないと思えたのです」

 大学卒業後、任意団体として障害者にスポーツを教える教室を作り、2005年にNPO法人として発足した。ロッククライミングやラフティング、水泳やキャンプなど種目は多岐にわたる。都内の公共施設などを借りて開く「アダプティブ」の教室には、発達障害を持つ人を中心に幼児から30代まで、毎月のべ150~200人が参加している。

 外から見ると、発達障害の子どもたちは「運動ができない」と、つい決めつけてしまいがちだ。だが齊藤さんによると、「できない」状態を詳しく分析していくと、(1)手や足を広げるなど体の使い方がそもそもわからない(2)運動経験が少ないためにどうやっていいのかわからない(3)やり方はわかっているが訓練不足のためにできない(4)わかっているが、以前から体育を見学するなどの習慣が当たり前になっているためにやらない、などいろいろなのだという。

「物事に集中する、こだわることが発達障害の特徴でもあるので、スポーツをこだわりの一つにしてあげられたら、彼らは自ら健康の維持・増進ができるようになります」(齊藤さん)

AERA 2012年11月26日号