写真って撮り方のハウツー本は多いのに、撮られ方の本って見たことがない。スマホの普及で撮られる機会は増えたのに、どうしても自然な笑顔が作れず、「目が死んでいる」怖い表情になってしまうのだ。

 なんとかしたい──そう思っていた時、「写真写りレッスン」なるものがあると聞き、東京・北青山にあるアリアフォトグラフィックスタジオを訪ねた。

 スタジオの代表で『写真、撮られ術。』の著書もある永田昌徳さん(39)が本日の講師。

まず、正しい姿勢を伝授してもらう。まず両足のかかとをつけて、つま先を軽く開く。手を膝に置いてしゃがんだところで上半身を起こす。骨盤の上に肩がくるようなイメージだ。そのまま立ち上がると、なるほどお尻と胸が上がり、ウエストも絞られた(気がする)。

 二つめのポイントは重心だ。

「人間は動いているほうが自然に見える。でも動きながらの撮影は難しいので、動いている風に撮るために重心を動かします」

 片足を一歩踏み出し、重心を前の足に乗せてみる。

 三つめは体の角度。ただ斜めに立つだけでは不十分で、顔、上半身と順にひねることで、腰にくびれができ、体のラインにメリハリができる。なんとなく動きが不自然な気がするが、

「写真は平面なので、より立体的に表現するのが大切。大げさなぐらいがいい」(永田さん)

 姿勢ができたら、次は顔。

 鏡を見ながら角度を変える。あごを引くと「かわいい系」、上げると「セクシー系」。頭を左右どちらかに傾けると優しい印象になる。ほとんどの人は左右の顔が違う。どの角度が一番いいか、事前にチェックしておくといい。永田さんは強調する。

「大切なのは、スタイルよりも表情です。特に、女性は笑顔が魅力的に見えます」

 多くの人が思う“抹殺したい”写真の筆頭は、「運転免許証」ではないだろうか。更新まで3~5年も持ち続けるのに、犯罪者のような人相。その理由を、永田さんは「感情が停止しているから」という。免許証の撮影では、ぎりぎりまで下を向き、ディズニーランドでミッキーが手を振る場面を想像してから顔を上げると自然な笑顔が出ると勧めている。

AERA 2012年9月24日号