「いままで、静岡、大阪、京都、東京と、いくつかの土地に住んできました。どの街にもいいところがあって、街ごとに深い愛情を持っています。けれど、ひとつの年の流れの中には、4つの季節、12の月があるということを、どこよりも意識させられ、ときの移ろいという趣を教えてくれたのは、京都です」



 本書『京都おでかけ帖』でこのように述べるのは、エッセイストとして活躍する甲斐みのりさん。20代の2年間を京都で過ごすうち、甲斐さんは京都に魅了され、年月のたった今もなお、訪れるたび懐かしさと当時のときめきが蘇ってくるのだといいます。



 冒頭で述べているように、京都の魅力のひとつは季節の移ろいを感じられるところ。本書では、京都における毎月ごとの楽しみ方を描いた、甘酸っぱい青春の香りはらむエッセイが綴られていきますが、10月のテーマは"恋人写真"。恋人と巡りたい撮影スポットが紹介されています。



 暑さも和らぎ、カメラ片手に散策をするにも気持ちの良い季節。そこで、ここでは甲斐さんがオススメする、"恋人写真"の撮影スポットをいくつかご紹介します。

 まずは、水路閣〜インクライン。



「南禅寺に隣接する、煉瓦造りのアーチ・水路閣からインクラインの終点で、線路跡がある蹴上までは物語ある写真を撮ることができる、恋人たちには恰好の撮影場所」(本書より)



 煉瓦のアーチの柱から、彼女が顔だけをのぞかせている写真など、素敵な写真を撮ることができそうです。



 続いて、京都市動物園。明治36年、大正天皇の御成婚記念に造られ、国内では上野動物園につぐ歴史を持つという京都市動物園も撮影スポットなのだそう。



「童心にかえり、ソフトクリームをほおばりながら、無邪気にはしゃぐ恋人をパチリとどうぞ」(本書より)



 さらに甲斐さんがオススメするのは、出町柳の河原。出町柳駅前、鴨川にかかる賀茂大橋から川面を見下ろすと、千鳥と亀の形をした飛び石を見つけることができるのだといいます。実際に河原におり、飛び石をつたって川を渡っている恋人の姿を写真におさめてみるのもいいかもしれません。



このたび文庫版となり、旅のお伴にも最適となった本書。恋人がいらっしゃる方はもちろん、ひとりでも楽しむことのできる京都の12通りの味わい方を知ることができます。