関西の人は納豆が苦手というイメージを持つ人もいるかもしれません。


 しかし、かつて「納豆ダイエット」がテレビ番組に取り上げられ、さらにその内容が捏造であったと判明したとき、大阪出身の亀田興毅さんが「納豆は好物。納豆のせいにされて、かわいそうや」と擁護のコメントをしたことが報じられました。また、同じく大阪出身の和田アキ子さんも2008年に全国納豆協同組合連合会の選ぶ「納豆クイーン」に選ばれ、アツい納豆愛をPRした、なんてことも。「納豆=関西人が嫌い」という認識は、すでに古いのかもしれません。


 もはや「ニッポンの国民食」といえる納豆。でも、「実は、日本だけのものではない」と聞けば驚く人が多いのではないでしょうか。


 海外の納豆事情を記し話題となっている書籍『謎のアジア納豆』。本書の著者であるノンフィクション作家の高野秀行さんは、ミャンマーやタイの反政府ゲリラを取材するうち、地元の人々が納豆を食べていることに気づいたといいます。しかも、タイのシャイ族が食べる納豆は現地語で「トナウ」。ナットウという発音をひっくり返したような単語で、高野さんも日本人にこれを話すと「『嘘でしょ!』とまるで私が寒いギャグを飛ばしたかのような反応をされる」とか。


 本書ではブータンやネパール、中国で食される納豆が紹介されますが、ここで浮かぶのは、「じゃあ納豆はどこが発祥なの?」という疑問。高野さんは、「納豆は日本と朝鮮半島を含め、アジア大陸東部の各地で非同時多発的に見出されていった」として、次のような自身の考えを示します。


「納豆は実に簡単にできる食べ物だ。(中略)いろいろな場所でいろいろな時期に作られるようになり、いったん作られると、近隣の民族にも『お、これ、なかなか美味いな』という調子で伝わっていったのではないか」


「日本は日本で独自に発見、発達していったのではないかと思う。理由は、繰り返しになるが、納豆はあまりに簡単にできるからだ」(以上、本書より)


 意外にも、アジアに広がる食べ物であった納豆。本書は、日常生活で納豆を食べるとき、「アジア納豆」にも思いを馳せさせてくれる一冊です。