ランプに照らされた薄暗い店内、ステンドグラスをはじめとする凝った内装に、年季の入ったテーブルや椅子。チェーン店とはまた異なった魅力をもって、人びとを惹きつける純喫茶の数々は、その一軒一軒が独自の趣を呈しています。



 こうした全国各地に存在する純喫茶に、1300軒以上も足を運んだことがあるという、難波里奈さん。本書『純喫茶へ、1000軒』では、純喫茶通といっても過言ではない難波さんオススメの、純喫茶の名店の数々が紹介されていきます。



 数ある純喫茶のなかで、初めて純喫茶を訪れる方に難波さんがオススメするお店は、東京・上野にある『丘』。その理由として、「映画のロケ地として頻繁に使用される昭和レトロを満喫出来ること」「上野という大きな駅にあってわかりやすいこと」「十分な広さがあり、よほど混み合う時間帯でない限り好きな席に座れること」などを挙げています。



 そして実際に純喫茶を訪れたならば、コーヒー片手に店内の雰囲気に浸るのも良いですが、美味しい食べ物が欲しくなるときも。そんなとき、この『丘』では、純喫茶に欠かせない定番メニュー・ナポリタンも、納得の味を楽しむことができるといいます。



「純喫茶へ行くとつい食べたくなるナポリタンも王道のルックス。太麺に玉ねぎ、ピーマン、ベーコンに、甘めのケチャップがたっぷり。家で作ってもなかなか再現出来ないナポリタンは喫茶店の数だけ味もありますが、こちらの味はほとんどの人が好きなのではないでしょうか」(本書より)



 ちなみに、難波さんが現在最も好みだというナポリタンは、東京・神保町の『ラドリオ』のもの。創業64年の老舗純喫茶である『ラドリオ』は、コーヒーの上にたっぷりと生クリームの載った、ウインナーコーヒーの発祥の地でもあるのだそうです。



 街に息づき、どこか懐かしさや温かみをも感じることのできる純喫茶の数々。難波さんは、純喫茶の魅力について次のように語ります。



「純喫茶は、その街を知るための手がかりのような場所であると思っています。そこにしかない場所、そこにしかいない店主、そこでしか食べられないメニュー......。そして、純喫茶での何気ない時間としてあとでふと思い出すのは、一緒に訪れた友人、常連のお客様、お店のマスター、などとの何気ない会話だったりするのかもしれませんね」(本書より)



 本書巻末には、1000軒にも及ぶ純喫茶リストも掲載されているので、気になる一軒に足を運んでみてはいかがでしょうか。