ビジネス界で活躍する人物を数多く輩出しているコンサルティング会社のマッキンゼー。経済評論家の勝間和代氏、ディー・エヌ・エー(DeNA)創業者の南場智子氏、京都大学客員准教授の瀧本哲史氏らは、皆、マッキンゼーの出身者です。



 優秀な人材が数多く揃う同社では、まず学ぶべき姿勢があるといいます。様々な困難な問題を解決するために重要な「ゼロ発想」です。この発想は、自ら導き出した結論に対して疑いの目を向けるというもの。「自身の経験からくる結論ほどアテにならないものはない」ということを理解し、結論を疑うことで物事の本質に目を向けるのです。解決しにくい問題に直面した時は、つねにゼロから考え、"そもそも"に立ち返ることが大切なのです。



 ある例が、同社出身の大島祥誉氏の著書『マッキンゼーのエリートが大切にしている39の仕事の習慣』で紹介されています。



 例えば、ある会社から「当社の○○事業は2年連続赤字で、挽回の道筋が見えません。いったいどこに問題があるのか、どうすれば解決できるのか、知恵を貸してください」という相談があったとします。通常のコンサルは、会社の問題を探し、分析、そして解決方法を考えます。その後に○○事業の黒字化を考えます。



 ただ、この通常の方法にについて、大島氏は「いい仕事とは言えません」と指摘しています。



 上記の方法では、クライアントの相談に場当たり的に意見をしているだけで、ゼロ発想がなく、物事の本質に迫る"そもそも"に立ち返っていないというのです。



 では、マッキンゼーでいう、"そもそも"とは一体なんなのでしょう。



 この場合、まずそのビジネスを今後、続ける必要があるのかどうか、という視点から考えるのです。どんなに過去に成功事例があっても、現在は挽回の可能性が絶たれようとしている状況。だとしたら、そのビジネスを捨てることも一つの選択肢だというのです。もし、捨てることが最適だと判断した場合は、"そもそも"の問題は、その事業の問題を解決することではなく、その事業を捨てた後にどう収益化するか。そこをマッキンゼーは考えるのです。



 この「ゼロ発想」は、恋愛に置き換えてみることもできます。



 もし、友人から最近、彼氏・彼女との関係がうまくいっていないと相談を受けた場合、あなたはどう問題を解決しますか?



「この場合、"どうすればうまくいくか"という視点で相談にのり、"もう少し彼氏・彼女の話を聴いて、お互い話し合ってみるべきじゃないかな?"と答えることもできます。しかし、そもそもその彼氏・彼女の人間性に問題があるのだとしたら、"別れたほうがいいよ"というアイデアを出してあげることが、大切なケースだってありえますよね。その友人に別れる気持ちがまったくないときほど、ハッとさせられ、思考の視点が切り替わるよい機会になるかもしれません」(同書より)



 これが、マッキンゼーの「ゼロ発想」。決して上っ面だけで相談に乗り、無責任な答えを導いているわけではないのです。クライアントに対して真摯に向き合い、問題を深堀して"そもそも"について考える。こういった「ゼロ発想」という思考をまず身につけるのが同社のモットーなのです。



 あらゆる問題を前に足踏みするでのはなく、ゼロクリアして前進する。そんなマッキンゼー流「ゼロ発想」を、みなさんも取り入れてみてはどうでしょうか。