■書肆 吾輩堂(福岡市)

 福岡の「書肆 吾輩堂」は6年前、オンライン書店として開店した。

 店主の大久保京さんは子どものころ、明治生まれの曽祖母をはじめ家族から「は化けて出るから」と飼うことを禁じられ、大人になって猫と暮らし始めた。猫に関する本をたくさん読もうとしたものの、当時は効率よく本を集められず、「猫の本だけを扱う本屋があったら」と思っていた。

書肆 吾輩堂/福岡市中央区六本松1-3-13 11:00~18:00(月、月が祝日の場合は火、木曜定休) (写真=書肆 吾輩堂提供)
書肆 吾輩堂/福岡市中央区六本松1-3-13 11:00~18:00(月、月が祝日の場合は火、木曜定休) (写真=書肆 吾輩堂提供)

 美術館に勤め、結婚、出産を経てもその思いは消えず、2010年に仕事をやめて一念発起。準備期間をへて、オンライン書店を開店した。古書組合に属し、古本を軸に新本、雑貨も取り扱う。雑貨は大人も使えるデザインを選び、唐津焼の箸置きなど、地元九州の作家とコラボしたオリジナル商品にも力を入れる。

 昨年12月、念願の実店舗をオープン。1階は本、2階は雑貨、ギャラリー、クラフトビールやワインが飲めるスペースとして、こたつも置いた。オンライン書店の常連客が遠方から来店することもある。

「うれしいですね。猫がつなぐ縁だと思っています」

 そんな大久保さんが「猫を飼いたいけど……」と迷っている人にすすめるのが『寄りそう猫』。実話なので気持ちがスッと入りやすいという。もう一冊、『ちいさないきものと日々のこと』(もりのこと文庫)も登場するのは猫だけではないが「一緒にいたきらめくような時間を愛おしむ様子が伝わってくる」という。

 作家がなぜ猫に夢中になるのか、大久保さんは考えてみた。猫は静かで、夜型の作家と生活リズムが合い、媚びない姿が審美眼にかない、冬温かい……。そんな猫にひかれる作家の日常が見えるのが、『大佛次郎と猫 500匹と暮らした文豪』と『ノラや』。

「内田百けん(=もんがまえに月)はおかしいくらい猫に入り込んでしまっています。明治生まれの文豪が失踪した猫を思って日々泣き暮らしていたんですよ。作家と猫の究極の愛のかたち。哀しくて、でも猫を愛する人なら誰でも思い当たるところがある。猫好き必読の書です」

<書肆 吾輩堂のおすすめ本>(左から)【レベル3】『ノラや』内田百閒724円 中公文庫 庭の茂みからいなくなった愛猫ノラへの思いを延々と書き続ける文豪。2匹の猫にまつわる随筆14編。【レベル2】『大佛次郎と猫 500匹と暮らした文豪』監修・大佛次郎記念館 1500円 小学館 猫好きの大佛次郎が収集した猫グッズ、絵画、本人の随筆、猫と戯れる写真などを掲載。猫への愛情がさく裂。【レベル1】『寄りそう猫』佐竹茉莉子 1200円 辰巳出版各地で猫と出会ってきた著者が、人と寄りそう猫の心温まる実話を写真とともに紹介。ウェブでの連載から選んだ17話を収録する。※価格はいずれも税別
<書肆 吾輩堂のおすすめ本>(左から)

【レベル3】『ノラや』内田百閒724円 中公文庫 庭の茂みからいなくなった愛猫ノラへの思いを延々と書き続ける文豪。2匹の猫にまつわる随筆14編。

【レベル2】
『大佛次郎と猫 500匹と暮らした文豪』監修・大佛次郎記念館 1500円 小学館 猫好きの大佛次郎が収集した猫グッズ、絵画、本人の随筆、猫と戯れる写真などを掲載。猫への愛情がさく裂。

【レベル1】
『寄りそう猫』佐竹茉莉子 1200円 辰巳出版
各地で猫と出会ってきた著者が、人と寄りそう猫の心温まる実話を写真とともに紹介。ウェブでの連載から選んだ17話を収録する。※価格はいずれも税別

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