現代的な雰囲気でカッコいいランちゃんがいて、下町の子で庶民的なスーちゃんがいて。ちょっと無口でおとなしい雰囲気のミキちゃんは、ドリフターズ「第5の男」の僕のように、キャンディーズ「第3の女」みたいな役割だった気がします。オチになるのはランちゃんやスーちゃんなんだけど、ミキちゃんがいることで、バランスもとれ、広がりのようなものも出せたんです。僕らだって、志村(けん)や加藤(茶)が5人いてもおもしろいものは作れませんからね。


3人それぞれの個性が光った「キャンディーズ」(左からミキ、ラン、スー)=渡辺プロダクション提供
3人それぞれの個性が光った「キャンディーズ」(左からミキ、ラン、スー)=渡辺プロダクション提供

 あと2年ぐらい解散しないでいたらどうなったかなと、個人的に思うこともありますね。さらにすごいグループになっていた気がします。もしかしたら、もっとコントグループみたいになってたりしてね(笑)。

 スーちゃんと長さんはもういないけれど、いつかまた一緒にコントやれたら楽しいでしょうね。そのときはミキちゃんにも特別に復帰してもらえないかな。お互い本気でのコント、してみたいですね。

■俳優・コメディアン 伊東四朗『どっぷり「みごろ!たべごろ!」。コントおもしろくしたリズム感』

 ランちゃんがCDを出して、コンサートもやるんですね。キャンディーズはそれぞれ個性もあって、ハーモニーもきれいでしたからね。また歌が聴けるというのは、うれしくなりますね。

俳優・コメディアン 伊東四朗 (提供/オルテ企画)
俳優・コメディアン 伊東四朗 (提供/オルテ企画)

 私と小松(政夫)っちゃんがやっていた番組「みごろ!たべごろ!笑いごろ!!」のコントコーナーに、キャンディーズにレギュラーで出てもらいました。私がおっかさん役で、ランちゃんとスーちゃんが半ズボンに坊主頭のカツラかぶって男の子役をしてもらってました。ミキちゃんだけスカートはいた女の子役ですね。コントってのは、リズム感が最も必要なんですね。キャンディーズはそのリズム感がとてもよくて、コントもおもしろくしてもらいました。台本以上のことをやってくれたと思います。

 当時の若いアイドルや歌手は、コントはやらないって人も少なくなかったです。だけど彼女たちは、いっぺんに溶け込んできてくれました。正直言ってあそこまでやってくれるとは思いませんでした。一世を風靡したアイドルだった彼女たちが、どっぷりとコントをやってくれた。それがお茶の間にも届いたんでしょうね。僕と小松っちゃんも、ずいぶん助けられました。僕たち2人だけだったら、全然違うものになっていたでしょう。

 コントで何かを得て、それを演技の糧にしていくひとがたまにいるのですが、ランちゃんがまさにそうだった気がします。あんなにお芝居がうまいとは、当時は思ってませんでした。沢村一樹君主演のドラマ「DOCTORS 最強の名医」でのお医者さん役も、とてもよくて。私も出してほしかったですね(笑)。

 私と小松、番組スタッフで、バスを借りて箱根へ1泊旅行をしたことがありました。スタッフが持参したギター1本で、3人が座敷で「年下の男の子」を歌ってくれました。彼女たちも浴衣姿で。とてもぜいたくな時間でしたね。

 スーちゃんとは何度か共演しましたが、ランちゃんとは直接共演の機会に恵まれず、ミキちゃんは芸能界を完全に引退してしまいました。いつかランちゃんとも共演したいですね。役名もないぐらいの、通りすがりの役なんていいですね。ランちゃんとすれ違って、お互いが「ん?」って振り返ったりしながらもそのまますれ違っていくみたいな。知ってる人だけ笑ってくれるような、そういうの、好きなんですよね。

(聞き手/本誌・太田サトル、上田耕司)

週刊朝日  2019年6月14日号より抜粋