デキゴトロジー
デキゴトロジー

「出来事あれ!」。創造主は言った。ケチでスケベ、あるいはポンビキ、人間の本質は変わることはない。その本質が描かれたフツーのひとたちのありえない「出来事」を残す、それがデキゴトロジー。本誌がお休みしても、「出来事」は永遠です。

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 1978年秋──ひとつの連載が“爆誕”した。

 生みの親は、穴吹史士氏(故人)。

 のちに本誌編集長に就任した時代には、西原理恵子・神足裕司の「恨ミシュラン」、松本人志の「オフオフ・ダウンタウン」、ナンシー関の「小耳にはさもう」などの人気連載もスタートさせた穴吹氏は、当時、こんなことを考えていた。

<いま世間に出来事としてあふれかえっているものの寿命はかくも短い。相当重大げに見える出来事も、百年後にはまず何の意味も持たないものになっている。(略)千年後となると、もうゴミ以下である>(単行本『デキゴトロジー』シリーズ「デキゴトロジー宣言」から)

『今昔物語』。「今は昔」の書き出しで始まる平安時代に編まれた説話集だ。それぞれの話に登場する人物は、<概してケチで小心、かつゴマスリ、でなかったらスケベ、あるいはポンビキといった類>であるが、現代人も<相変わらずケチでゴマスリ、かつポンビキである>。

「デキゴトロジー」とは、世に満ちる数多くの“出来事”を記した連載だ。

“天才”とも呼ばれた穴吹氏は、そういった新聞やテレビのニュースとして報じられない、<もし『デキゴトロジー』がなかったら、当事者とその周辺のごくわずかの人々に知られただけで、歴史のなかに埋もれてしまったに違いない>出来事たちを、記録しておこう、出来事を学問としてとらえてみよう(=出来事学)と考えた。

<いわば、千年後の人々に向けた『今昔物語』である>

 同年11月3日号、かくして連載は産声をあげた。テレビやSNSなどで、身の回りのエピソードトーク的な話題があふれる現代では不思議な気もするかもしれないが、ありそうでなかった斬新な連載は、たちまち本誌の人気看板連載の座を獲得するのだった。

 穴吹氏から連綿と続く“元締”のもと、書き手は“デキゴトロジスト”と呼ばれた、気鋭のライター陣。ホントにあった珠玉のデキゴトをもとめ、ネタを集めまくる。原稿料も立派だった。

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