認知症関連コーナー「小さな本棚」(川崎市立宮前図書館提供)
認知症関連コーナー「小さな本棚」(川崎市立宮前図書館提供)

 誰でも利用できる公共図書館はシニアの利用が増えている。シニア向けのコーナーやイベントを充実させたり、認知症の疑いのある利用者への対応に取り組み始めたりするところも出てきた。

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 50代半ばで早期退職した男性(58)は、2年ほど前に関東地方から長野県へ移住した。「出勤のない生活は楽です」と話し、公共図書館をよく利用するという。会社員時代に担当した人材育成の経験を生かし、その関連の教材づくりの仕事を引き受けている。

「もともと本が好き。仕事の調べもので公共図書館へ行けば資料は全部ある。大学があるところなので専門書もそろっており、ここに移住したのは図書館も理由の一つ。図書館のコンシェルジュも優秀で、よく相談にのってくれる」

 男性はこう話し、地方の移住先を決めるには現地の公共図書館をめぐり、下見をするのもいいと勧める。

 男性は、図書館で新聞・雑誌コーナーを利用するシニアの人をよく見かけると話す。図書館は新型コロナウイルスの流行で自習室を閉鎖し、短時間の利用を勧める。「ルールに逆らっている人はあまりいない」と感じている。市内に図書館が数館あり、男性が住む地域には徒歩圏内に3、4館ある。シニアの人が利用する時間は短く、いくつかの図書館を「歩いてぐるぐる回っている方もいる」と話す。

 歌人の内野光子さんは関東の地方都市に暮らす。短歌関連の調べもので、地元の公共図書館をよく利用する。80代となり、「断捨離の世代で、そんなに本を買えない」と話し、図書館はなくてはならない存在という。

 内野さんの地元の図書館でも、新聞や雑誌を読み、ビデオを見るシニアが多いという。「居場所の一つとして図書館は重要と思う」と内野さんは話す。公共図書館は児童書が目立つと感じる一方で、シニアが利用する雑誌の品ぞろえ(タイトル数)を予算の制約から減らしていると指摘する。

「せっかく来て雑誌でも見ようと思っている方や、趣味で見る方のためにも、タイトルは多くしてほしい」(内野さん)

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