ジャーナリストの田原総一朗氏が、旧統一教会問題と内閣支持率について言及する。
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岸田文雄政権が発足したとき、私はこの内閣に期待していた。
安倍晋三氏や菅義偉氏は、仲間は大事にするが、野党の声や、自民党の中でも意見の異なる他派閥の声には耳を傾けない首相だった。
それに対して岸田氏は、自分で「聞く耳を持った政治家」だと強調していた。
それに岸田氏は宏池会のリーダーである。宏池会の池田勇人、宮沢喜一、加藤紘一などは、いずれもハト派で清潔な政治家であった。
たとえば宮沢氏が活躍していた時代、自民党の少なからぬ政治家は、女性関係や資金の面での問題を有していたが、宮沢氏は女性関係も資金の面でも例外的に清潔で、しかも護憲派、つまり代表的なハト派の政治家であった。加藤氏も同様に清潔であり、ハト派だった。
だから私は、自民党の中では宏池会を支持してきた。そして、岸田内閣に期待したのである。
もっとも、岸田派は自民党の第4派閥であり、最大派閥は岸田派の2倍以上の規模の安倍派である。
だから岸田氏は、政策のすべてについて安倍氏に相談しなければならなかった。
ただし、岸田氏は何事も、タカ派の安倍氏の10の主張に対して、7~8の採用に抑えた。つまり、それなりのハト派色を示したのである。
ところが、その安倍氏が銃撃されて亡くなった。マスメディア内では、岸田氏は相談すべき師匠を失って混乱し、内閣自体が混迷するのではないか、という主張がまかり通っていた。
だが、私は岸田氏に、安倍氏が亡くなった今こそ、岸田色を鮮明に打ち出すべきだと進言した。
岸田内閣が取り組むべき課題は、劣化した経済を復興させること、そして地球環境を悪化させないためのカーボンニュートラルなどのエネルギー政策、さらに歴代内閣が逃げてきた安全保障政策にどう取り組むか、ということである。
そこへ旧統一教会問題という大問題が襲いかかった。