東尾修
東尾修

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、クローザーの苦労を語る。

【写真】開幕から7連続セーブを記録した巨人・大勢

*  *  *

 阪神の低迷が続いている。これだけ負けが込むと、一つひとつのプレーに冷静な判断ができなくなる。「積極的に」というキーワードが、選手の冷静な判断力を奪ったり、試合の流れの大局を見失ったりすることにつながる。選手は必死にもがいている。何とか勝ち星をつけて一つ、二つ積み重ねる中で、阪神としての「日常」を取り戻してもらいたいと思う。

 阪神は開幕戦に五回まで8対1とリードしながら大逆転負けを喫した。九回を投げたケラーは3失点したが、打たれたのは自身の得意な球であるカーブを含めた変化球だった。直球に関してはファウルや空振りを取れていたと思う。だから気にする必要はないのだが、3月29日の広島戦では、そのストレートも球速が落ち、空振りも取れなくなった。一気に本来の力が出せなくなった。こうなると使いたくても使えない。

 選手起用は結果論の部分はある。ただ、ケラーよりもよい球を投げる、もしくは調子の良い救援投手は本当にいなかったのか。もしいたならば、その可能性を模索していたかどうか。巨人はビエイラ、デラロサという抑え候補の調子が上がらないと見るや、ドラフト1位の大勢をクローザー起用した。その柔軟性が好結果を生み、開幕ダッシュにつながっている。

6日、開幕から7連続セーブを記録した巨人・大勢(左)
6日、開幕から7連続セーブを記録した巨人・大勢(左)

 よく開幕戦の重要性を問われるが、たかが1試合でしかない。ただ、その1試合に起きたことが、チーム、選手に影響を与える可能性があるのも開幕戦である。言えることは「勝てる試合をキッチリ勝つこと」である。春先は勝ったり、負けたりしながら、戦力の強いところと弱いところを見極め、ピースを入れ替えて夏以降に向けて整備する。ただ投手起用の根幹をなす「勝利の方程式」、とりわけクローザーの不安定なチームは立て直しに時間がかかってしまう。

 今のクローザーは大変だ。先発投手に150キロを超える投手があふれている。その球を見た打者の目が慣れ、しかも集中力が極限に達する九回を締めるには、「直球と変化球、両方の球は追えない」というぐらい、直球と変化球双方に高いレベルが求められる。しかも、難攻不落な投手になればなるほど、打者は狙いを絞る。そういった打者を抑え込んでいくのは容易ではない。

著者プロフィールを見る
東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

東尾修の記事一覧はこちら
次のページ