金原亭杏寿さん(撮影/写真部・東川哲也)
金原亭杏寿さん(撮影/写真部・東川哲也)

 そのルックスから、「艶かわいい落語家」などと呼ばれることもある、気鋭の落語家・金原亭杏寿さん。

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 沖縄生まれで、地元でタレント・俳優として活動した後、上京。連続テレビ小説「純と愛」へのレギュラー出演などで活躍したが、2017年のある日、現在の師匠である金原亭世之介さんの独演会を見た。

「生で見る初めての落語でした。舞台やドラマでは照明や音響、衣装なども駆使して演出しますが、一人で座っているだけですべてを表現し、何もないのに情景が鮮明に伝わってくるところに衝撃を受けました」

 その日のうちに世之介さんに弟子入りを志願、のちに「人生かけてやりたいと思うなら、面倒みてやるから」と、入門を認められた。

 入門後、わずか2カ月半で世之介さんが開く落語会で初高座を経験する。

「師匠に最初に教わった『道灌』をやりました。このあいだまで素人だったのに、師匠の弟子ということで高座に上がらせていただけて。不安もありましたが、あたたかいお客さんばかりで、上がったあとは楽しかった記憶しかありません」

 前座見習いから、19年に前座に。22年は二つ目への昇進を目指す。落語の持ちネタも、25席に増えた。

「得意なものはまったくないのですが(笑)、やっぱり初めて見たときに師匠が演じていた『宮戸川』は思い入れも強いので、もっと磨いていきたい一席です。まだまだこれからの身ですが、女性落語家だからというよりも、杏寿だからできる表現、そういったものを作り上げていけたらいいなと思っています」

 その美貌にも注目が集まっていることについて聞くと、

「とんでもございません(笑)。ですけど、せっかくそう言ってくださる方がいらっしゃるのでしたら、ありがたく受け止めておきます。もちろん私の落語を聴いてというのが一番うれしいのですが、容姿であれ、声であれ、どんなきっかけでも落語の世界に興味をもっていただき、もっと聴いてみようかなと思っていただけたら、こんな本望なことはありません」

 前座修業に邁進する日々。プライベートの時間はほとんどないというが、今後についてはこんな夢がある。

「まだ海外に行ったことがないので、現在の状況が落ち着いたら、いつか海外で落語をすることができたら幸せですね」

(本誌・太田サトル)

週刊朝日  2022年1月28日号