※写真はイメージです (GettyImages)
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 緊急事態宣言下でも酒を提供している東京・新橋の居酒屋を取材で訪れた、今年初夏のことだ。

 ほぼ満席の店内で、すでにほろ酔い加減の3人組の中年サラリーマンが、ジョッキの酎ハイを手に盛り上がっていた。

「はいよ、当店自慢の唐揚げね」

 十数人も入れば満席になる店をワンオペで切り盛りしている店長が、彼らのテーブルに置く。

 それをひと口食べた一人が「おいしすぎて、なんだこりゃ?」と言うと、別の一人が「私史上いちばんです」と応じ、大笑い。このやりとりの直前、店のテレビが映していたBS放送「ナイター中継」の合間に流れたコマーシャル(CM)のセリフだという。

 テレビで繰り返し流れていたので、ご記憶の方も多いだろう。これは世田谷自然食品(東京)の野菜ジュース「十六種類の野菜」の通販CMで、ジュースを飲んだ“味の匠”たちが思わず口にするセリフだ。

 彼らは、この後も野球そっちのけで通販CMの話題に夢中。特に盛り上がっていたのが自然食研(大分)の「しじみ習慣」のCMだった。

 CMでは上司と部下らしい2人のビジネスマンが登場する。

 部下らしき男がつらそうに「きのうふかくて~」と言うと、上司らしき男が「じゃあ、これ飲んでみろ」と差し出すのが「しじみ習慣」。

 ほろ酔いサラリーマンたちは、最初の部下のひと言「ふかくて~」の意味がわからないとして、「“二日酔いで~”ではないか」「“不覚です”だろう」「いや“深酒で~”と言いたかったのだろう」などと話し合っていた。

 そうこうするうち、テレビで同じCMが流れた。3人の結論は「やっぱり、わかんねぇ」。

 後で調べると、このやりとりはネット上でも侃々諤々(かんかんがくがく)の議論がなされていた。

「しじみ習慣」に限らず、この時期、テレビでは通販のCMが目白押しだった。特に目立っていたのが医療・健康食品関連。青汁や、ひざ関節によいとされるコンドロイチン、「若さを保つ」とうたうサプリメントのCMに出会わない番組はないと言えるほどだった。

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