2005年、弁護士のナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)は、アフリカのモーリタニア出身のモハメドゥ・スラヒ(タハール・ラヒム)の弁護を引き受ける。彼は9.11の首謀者の一人として拘束されたが、一度も裁判は開かれず、キューバのグアンタナモ収容所で地獄のような日々を送っていた。ナンシーは「不当な拘束」だとしてアメリカ合衆国を訴える。
時を同じくして、政府から米軍にモハメドゥを死刑判決に処せとの命令が下り、スチュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)が起訴を担当する。真相を明らかにすべく綿密な調査が始まるが、再三の開示請求でようやく政府から届いた機密文書には、愕然とする供述が記されていた。

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
根拠ないまま拘禁されている囚人を巡る弁護人と検事の「勝つための戦術」が興味深い。死刑を望む政府の意を受けた軍に送り込まれた検事の判断。囚人に対する人権無視に注目する弁護士。それ以上に囚人の弁論が胸を打つ。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
悪名高きグアンタナモの実態を告発する意図もあるが、核になるのは、原作の手記を書いたモハメドゥの豊かな知性や人間性。いつも期待を裏切らないラヒムの演技に心を揺さぶられる。ジョディの貫禄の演技も見応えあり。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
身体の震えを感じました。最後のエピローグまでも。こんなテーマなのに観やすく、実話でありながら娯楽としても学びとしても成立しています。調べていく中で人の心情が変わっていく様も良い。J・フォスター最高!
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
暴かれていない不正義を示す法廷ドラマでストレートな作りなのだが、食い足りなさが残る。描くべき題材が絞れていないというか取り上げている問題が多いからだろう。この題材にあえて挑んだことは評価に値するのだが。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年11月12日号