※写真はイメージです (GettyImages)
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 環境問題への対応などが叫ばれるなか、国連は2030年までに達成すべき17の目標を15年に採択した。いわゆる「SDGs」の登場によって、投資の世界でも従来の環境(E)、社会(S)、企業統治(G)を重視するESG投資が加速され、「SDGs投資」の様相を呈しつつある。

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「株価のパフォーマンスの差に表れ始めている。大きなお金を持っているところが投資基準にして動き始め、若い人も関心を向けている」

 楽天証券経済研究所の香川睦チーフグローバルストラテジストは話す。いまや株式市場は、低賃金労働でものづくりをしたり、二酸化炭素をたくさん排出していたりする企業を投資先から“除外”する動きが目立つ。「こうした問題に熱心でない企業の株価は上がりにくくなる可能性がある」(香川さん)

 いわゆるESG投資の考え方は欧州などで進んでいたが、SDGsの登場によって注目されてきた。

 象徴的なのは、米国バイデン政権が掲げる2兆ドル(約220兆円)規模のクリーンエネルギー投資計画だ。環境問題への対応をきっかけに、まさにESG投資の“呼び水”となった。

 そもそも「日本には2017年ごろ、SDGsもESGも同じタイミングで“黒船”のようにやってきた」と、ESG投資アドバイザーの夫馬賢治ニューラル代表は説明する。日本では世界有数の機関投資家、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が17年、すべての資産でESGの要素を考慮した投資を進めていくと表明。これがきっかけで、国内ではSDGsとESG投資が同時に広まった。

 GPIFは、今年3月末の運用資産額が約186兆円にのぼる。株式を直接保有するわけではなく、外部の運用会社を通じて投資している。このためGPIFは、運用を委託した金融機関に対し、ESGを考慮して投資するよう求めているという。

 世界持続可能投資連合(GSIA)が7月に発表したデータによると、20年のESG投資額は世界全体で35.3兆ドル(約3880兆円)で、前回調査の18年から15%増となった。このうち日本は2兆8740億ドル(約320兆円)で、18年調査から32%も増えた。

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