浅村は今季32本塁打で自身初の本塁打王、涌井も移籍1年目で最多勝に輝き、鈴木大、牧田、ロメロも期待に応える活躍を見せた。さらに、ドラフト1位の小深田大翔はリードオフマンに定着し、打率2割8分8厘、3本塁打、17盗塁と新人王の有力候補になっている。

 石井GMの選手を見る眼力の高さは、見事に証明されている。他球団の首脳陣は、こう評価する。

楽天は戦力だけ見ればソフトバンクにも見劣りしない。少なくとも2位のロッテより個々の選手の能力は上だと思う」

 一方で、個人成績がチームの結果に反映されていない。シーズン序盤は首位争いをしたが、中盤から失速して55勝57敗8分けで4位とCS進出も逃した。逆転負けが両リーグでワーストの32試合、1点差負けゲームは15試合と競り負ける試合が多く、勝負弱かった。

 編成面で辣腕(らつわん)を振るった石井GMが監督を兼務する「全権監督」でチームは生まれ変わるのだろうか。今回の監督人事にネット上では懐疑的な見方が多い。

「監督とGMは完全に別物。現場のトップと編成のトップでは、求められる能力はかなり異なる。成績が良くない監督を変えるのはGM権限だとしても、その責任を取って自分が後任監督となるのはありえない。GMとしての結果に非がないと考えるなら続ければいいだけ、兼任ななんてある意味責任放棄といえる」

「監督に就任するならGMをやめて専念するのが筋でしょう。そんな甘い世界ではないし、コーチもモノが言えなくなる。成功するイメージがまったくわかない」

 一方で、石井新監督の就任と共に発表されたコーチングスタッフに驚きの声が上がったという。スポーツ紙の楽天担当記者は言う。

「1、2軍のコーチングスタッフを確認したら、伊藤智仁1軍投手チーフコーチ、野村克則1軍作戦コーチの名前がなかった。三木監督、伊藤コーチ、野村コーチは石井GMのヤクルト時代の同僚で、要職について『お友達人事』とも揶揄(やゆ)されていました。自身が監督になった今回の組閣で勝負に徹してドライな判断をしたということでしょう」

 別の担当記者は、こう期待を寄せる。

「石井GMはひょうひょうとしているイメージが強いですが、野球の洞察力はすごい。伊藤さん、野村さんを外したのも勝負に徹しての決断でしょう。今の楽天に足りないのはピリッとしたことを言える指導者です。勝つためなら嫌われ役になることもいとわないと思います。どのような采配を振るうのか楽しみですね」

 楽天は最近7年間で5度、監督が代わっている。ファンからは、

「監督をコロコロ変えて愛着がわかない。石井GMは派手な補強ばかりするが、東北の気質に合っていないように感じる。もう外部からの補強はいい。星野仙一さんのように育てながら勝つ監督に4、5年やってもらいたい」

「中長期的なチーム強化というが、石井GMになって来季が3年目。全権監督で言い訳できない立場なんだから、来年優勝できなかったら責任を取ってほしい」

 など辛辣(しんらつ)なコメントが目立つ。

 石井GMに逆風が吹くが、「勝てば官軍」という言葉がある。来季は最高の結果を残し、東北のファンたちの心をつかめるだろうか。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事