山口:自民党の中で多様な意見が発信されて、ぶつかり合って、合意を作っていくという気風をもっと期待したいですね。

田原:集団的自衛権の行使容認のときには、高村(正彦/自民)、北側(一雄/公明)会談があり、公明党がブレーキ役を果たした。

山口:ブレーキ役と同時にアクセル役も果たしていきたいと思っています。自民党と違う意見を言ったり、国民の幅広い意見を受け止めたりできるのが連立政権のいいところです。言いっぱなしではなく合意を作り上げる。この姿勢は貫きたい。

田原:菅内閣は、経済の成長戦略会議を作ったが、メンバーの人選はどうだろう。竹中(平蔵)さんは新自由主義で、野党だけでなく自民党からも批判が強い。(デービッド・)アトキンソンさんはコロナ禍の今、中小企業を減らす再整理の好機だと。

山口:新自由主義的なやり方については心配する方が大勢います。ただ、中小企業は生産性が低いとする従来の欧米的な物差しだけで見ていたのではだめです。たとえば、江戸時代から連綿と続く技術と伝統を保持する中小企業が日本にはたくさんある。そういうところもちゃんと評価しながら、脱皮していくという視点が必要だと思います。

田原:保守の中に両氏に対する批判が強いのはまさにそこで、新自由主義は伝統を軽んじるのではないかという危惧がある。

山口:アトキンソンさん自身が経営している会社(小西美術工藝社)はそうした日本の伝統を基にした企業ですよね。だから、日本独自の長所をしっかり見ていると思います。生産性が低いという問題提起をしたうえで、どう乗り越えるか。この挑戦に応えるのがこれからの政治のあり方です。

田原:竹中さんは月7万円のベーシックインカムを提唱して批判されている。下手すると社会保障をすべて切り捨てるんじゃないかと。

山口:基礎的な所得を保障しようという考え方。公明党はこれに全面的にはくみしません。むしろサービスこそが大事。今の社会保障制度では十分と言えないところがある。国民が生活していくために必要なサービスを補充していこうというのが基本的な考え方です。収入は保障する、後はどう使おうと勝手ですよというのは無責任だと思います。

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