田原:9月の世論調査では都構想可決の向きが多かったが、投票日が近づくにつれて反対が強くなっていった。この点は?

山口:私自身は賛成をお願いした立場ですから、評価や分析をするのは控えたいと思います。

田原:否決された要因の一つは、公明党が二つに割れたこと。山口さんは承諾できないだろうけど、公明党は維新とも仲良くしたい、けれど自民党にも嫌われたくない、ちょうどいいバランスで分けたなと僕は思っている。

山口:バランスを取ろうと思って取れる話じゃないですよ(笑)。

田原:山口さんがそういう戦略を取ったとは言いませんよ。しかし、結果として維新にも敵対しないということになった。維新はダブル選挙の勝利後に、次の衆議院選挙での対立候補擁立をちらつかせた。政党のトップとしては当然、賛成反対の判断に影響したのでは。

山口:それはもう仮定の話です。大阪府本部がよく話し合って対応してきた問題であって、党中央がああしなさい、こうしなさいという課題ではないです。

田原:松井氏は引退を表明し、吉村氏は国政進出を否定した。維新の求心力は揺らぎ、今後が不透明だ。公明党の立ち位置はどうなる?

山口:維新が今後どうするか、どうなるかは維新自身の問題です。私は賛成をお願いした立場であって、評論家的な分析、評価は控えたい。

田原:自民党は反対していたけど、菅(義偉)首相は維新と非常に仲が良く、ねじれが起きていた。大阪都構想の否決は菅内閣にとってマイナスでは。

山口:それも発言は避けたいと思います。ただ、元々大阪の自民系保守層が二分して維新に流れていることを考えれば、維新支持層を見捨てたり、敵対したりすることなく抱え込むということに、安倍(晋三)前首相も菅首相も苦心してきたように思います。私が以前から言ってきたのは、大阪都構想の結果がどうあれ、政権運営の自公の枠組みに直接の影響はないということ。微動だにせずやっていきたい。

(構成/本誌・秦正理)

>>【後編/公明・山口那津男が“菅首相と安倍前首相”の違いを語る】へ続く

週刊朝日  2020年11月20日号より抜粋

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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